『ミケランジェロの暗号』感想・紹介・レビュー【虚々実々な攻防戦】
ミケランジェロの暗号
2011年に公開されたオーストリア・ルクセンブルクの戦争サスペンスコメディ映画。
監督・脚本の脚色をヴォルフガング・ムルンベルガー、脚本をポール・ヘンゲが務めた。
出演
- モーリッツ・ブライプトロイ
- ゲオルク・フリードリヒ
- ウーズラ・シュトラウス
- マルト・ケラー
- ウド・ザメル
- ウーヴェ・ボーム
- ライナー・ボック
序盤のあらすじ
ユダヤ人画商一族、カウフマン家が密かに所有するミケランジェロの絵。
それはムッソリーニも欲するほどの国宝級の代物だった。
ある日、一家の息子ヴィクトルは親友ルディに絵の在りかを教えてしまう。
ナチスに傾倒していたルディは、軍で昇進するためにそれを密告。
一家は絵を奪われ収容所へと送られる。
一方ナチスは、絵の取引の材料にイタリアと優位な条約を結ぼうとしていたが、奪った絵が贋作であることが発覚する。
本物の絵をどこかへ隠した一家の父は、すでに収容所で死亡していた・・・。
引用:(c)2010 AICHHOLZER FILM & SAMSA FILM ALL RIGHTS RESERVED.
今作は、2007年に公開され第80回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞した『ヒトラーの贋札』の製作陣が、ナチスから迫害の只中にあったユダヤ人画商ヴィクトル・カウフマンが過去に親友であった将校とバチカンから盗まれた「失われたミケランジェロ」を巡り、熾烈な争奪戦を繰り広げる様を描いた作品。
ストーリー自体は全体的に淡白な印象を受けるのだが、無駄に複雑な展開に伏線、人間関係などはほとんど無いのもあり、終始頭を使うことなく脱力したまま気軽に観ることが出来る作品に仕上がっている。
そして、ナチスなどを題材にした映画にありがちな凄惨な拷問シーンなども基本的には無い(脅迫シーンや必要最低限の暴力シーンはある)し、洋画にありがちな無駄なお色気シーンもないのでそういった意味でも観易い。
冒頭でカテゴリーを「戦争サスペンスコメディ」としたが、パッと見は共存出来ないであろうイメージだと思う。
しかし、今作を観ればそれを理解出来るのではないだろうか。
若干出来過ぎ感は否めないとはいえ、シンプルな展開にも関わらずしっかりと見応えがあって尚且つ、胃もたれしない程度にコメディテイストが効いている。
中々考えて作られているんだろうなと感心した。
当時実際に言われていたのかは定かではないが、ユダヤ人を見分ける方法の1つに「割礼していればユダヤ人」というものがある。
今作の中でもそのようなシーンが用意されていて、下着を脱がされたユダヤ人捕虜(実際はナチス)が「それは包茎手術の痕ですー!」と叫ぶのだが、記事を書いている今でも思い出すと笑えて来る。
ただ、ポスターやタイトルの印象から重厚な歴史映画を期待してみてしまうと、がっかりしてしまうのでオススメしない。
ユダヤ人強制収容などの重い話は、事実として単純に伝えるだけでストーリーの展開とは直接関係なく突っ走っていく。
そもそも、今作は政治サスペンスを銘打って作られているわけではないので、そういう観方自体が間違っているような気はするが、レビューで上記のようなパターンで評価を下げている人も居るので念のため。
安心して欲しいのは、作品としてしっかりと作られていて素晴らしい出来になっている。
ストーリーの展開と共に二転三転する立場の違いや、悲惨だった狂気の時代に1つの絵を巡った虚々実々が入り乱れた攻防劇。
他の作品ではあまり感じ得ないハラハラドキドキ感を感じながら観る事が出来るだろう。
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