『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』感想・紹介・レビュー【国家と国民】
アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男
2015年に公開されたドイツの伝記映画。
監督・脚本をラース・クラウメ、共同脚本をオリヴィエ・ゲーズが務めた。
出演
- ブルクハルト・クラウスナー
- ロナルト・ツェアフェルト
- リリト・シュタンゲンベルク
- イェルク・シュットアウフ
- ゼバスティアン・ブロンベルク
- ミヒャエル・シェンク
序盤のあらすじ
1950年代後半、西ドイツ・フランクフルト。
経済復興が進む一方、戦争の記憶が風化しようとしていく中、検事長のフリッツ・バウアーはナチス戦犯の告発に執念を燃やしていた。そんなある日、彼のもとに、逃亡中のナチスの大物戦犯アドルフ・アイヒマンがアルゼンチンに潜伏しているという重大な情報を記した手紙が届く。
バウアーはアイヒマンの罪をドイツの法廷で裁くため、部下のカールと共に証拠固めと潜伏場所の特定に奔走するが、ドイツ国内に巣食うナチス残党による妨害や圧力にさらされ、孤立無援の苦闘を強いられる。
引用:Wikipedia
アドルフ・アイヒマンとは
アドルフ・オットー・アイヒマン(1906.3.19-1962.6.1)はゲシュタポのユダヤ人移送局長官であるとともに、アウシュヴィッツ強制収容所へのユダヤ人移送に関わった人物。ホロコーストに関与し、数百万人に及ぶ強制収容所への移送における指揮的な役割を担った。
今作は、ナチスドイツの最重要戦犯であるアドルフ・アイヒマンを逮捕するに至り、その陰の功労者であるドイツ人検事フリッツ・バウアーの執念と苦悩や葛藤を描いた作品。
他に、フリッツ・バウアーをメインに据えた作品としては『検事フリッツ・バウアー ナチスを追い詰めた男』というものがある。
2作品とも同一人物を扱った作品ではあるのだが、明確な違いが存在する。
本作は”フリッツ・バウアー”という1人の人間をより深く捉え、その人物像から人間性などをしっかりと描いているため魅力的なキャラクターとして出来上がっている。
『検事フリッツ・バウアー』の方は本人の掘り下げというよりも、アデナウアー政権の詳細やこの戦後ナチスにおける戦犯狩りの事態の大きさをしっかりと描いている。
なので個人的には、先に『検事フリッツ・バウアー ナチスを追い詰めた男』を観て全体像や当時起きたことの詳細を把握し、次に今作を観る事でより理解が深まり知識として純粋に知ることが出来るだけでなく、より作品を楽しむことが出来るのではないだろうか。
何よりも題材が題材なので基本的にはある程度、この時代の関連知識や欧州各国の情勢に時代背景などを理解している人向けというのもある。
そもそも、海外逃亡したナチスドイツ高官とナチスドイツ出身の要職と、国外退避しているユダヤ系の検事が対立している構図なので日本人には若干分かりにくい部分もある。
そして良くも悪くも、この重厚なストーリーを上手く1時間45分という短い時間の中で成立させているのもあって、上手く作られたサスペンスもののように見えてしまうかもしれない。
勿論、全く知らなかったとしても(全くというのは余りないと思うが)上記の順番で観れば大まかな理解は出来るとは思うが、短い時間で纏められているのもあり知っていた方がスムーズに作品の世界に入ることが出来る。
今作の素晴らしい点は伝記映画として必要十分な完成度であるだけでなく、映画という創作物として面白く観る事が出来るという点。
実話ベースの作品の場合は、このバランスが難しくどちらか一方に偏ってしまうと成立しにくい。
実話に偏ってしまうと、伝記映画としては勿論素晴らしい物にはなると思うが映画としての魅力が減り、視聴者を置いてけぼりにしてしまう危険性がある。
創作物に偏ってしまえば、映画としては見応えが出るかもしれないが伝えなければならない真実や、事実をしっかりと視聴者に届ける事が出来なくなってしまう。
相変わらず邦題は気になるが、渋めに輝く俳優陣と緊迫感漂う空気感は観ている者を世界に引き込み、心地よい好奇心が煽られる大人の映画として素晴らしい出来。
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