『ロスト・ボディ』感想・紹介・レビュー【その人生が交差する時】
ロスト・ボディ
2012年に公開されたスペインのサスペンススリラー映画。
監督・脚本をオリオル・パウロ、共同脚本をララ・センディムが務めた。
出演
- ホセ・コロナド
- ウーゴ・シルバ
- ベレン・ルエダ
- アウラ・ガリード
序盤のあらすじ
ある夜、死体安置所から亡くなったばかりの女性マイカの遺体が消える事件が起きる。
事件を担当することになったハイメ警部は、マイカの年下の夫アレックスの態度から、彼が妻を殺害し、その証拠を隠蔽するために彼女の遺体を盗み出したと睨んで厳しく尋問するが、アレックスは頑なに否定する。
実はアレックスは、金持ちで支配的な妻マイカの存在をかねてより疎ましく思っており、そんな中で知り合った若い女性カルラと愛し合うようになっていたことから、確かに妻を毒殺していたのだ。
引用:Wikipedia
今作は、ある殺人事件の被害者であるマイカという女性の遺体が、嵐の夜に死体安置所から忽然と消えた事件と彼女の死の真相を巡るストーリーを地味ではあるが、秀逸なプロットと考えられた骨太なサスペンスとして描いた作品。
捜査を担当することになった刑事
事件の被害者であるマイカ
被害者の年下旦那
その旦那の不倫相手である女子大生
この4人の人生が図らずも交差したときに大きな驚きを感じることが出来る。
サスペンス物なので多少は都合のいい部分も存在するが、きちんと作り込まれたプロットに散りばめられた伏線、丁寧で違和感のない回収方法、俳優陣の素晴らしい演技によって、そういった粗などはそこまで気にならずに観る事が出来ると感じた。
それに加え、要所要所でホラー映画の撮影法とも感じる手法を取り入れており、時折ホラー映画を観ているような感覚にも陥らせてくれる。
しかしホラー要素が強くなりすぎることもなく、それらがいい刺激になり上質な作品へと昇華させている。
観ている際の印象としては、序盤で様々な謎や世界観や人物像などをしっかりと描き、物語が中盤に差し掛かる頃には事件の概要が頭の中ではある程度整理出来る段階になるので、終盤に向けてストーリーの展開について予想し始めるが、考えれば考えるほどどれもこれもしっくりこない。
そしてその違和感は物語のラストを観ることで全て解決し、観終わるとしっかり作り込まれた上質なミステリーを観たと感じることが出来た。
作風的に推理することによって成立する映画の場合は、その犯人又は黒幕や結末に驚かされることは多々あるが、ここまできっちりと良く出来たサスペンスはそこまで多くない。
冒頭からずっと不可解な事柄の連続ではあるのだが、それらを記憶し考えをかなり巡らせれば犯人まで辿り着こうと思えば辿り着ける作り。
それはつまり、結末に矛盾が無く散りばめられた伏線や謎も全て意味があるからこそ。
小説には「本格推理小説」というカテゴリーがあるが、今作は小説であればそこに入れてもいいくらい完成度が高い。
この作品に限った話ではないが、サブスクの動画配信サービスなどで、日本では劇場未公開の作品を見つけて視聴しそれが良かった時の「良い物見つけたな」という感覚は他ではなかなか味わえない気がする。
ハリウッド映画などは結構な割合で劇場公開されるが、今作を始めとするその他の国の映画はあまり劇場では観ることが出来ないせいもあってか、ハリウッドとは明らかに異なる独特な質感や進行の仕方に魅せ方というのは観るたびに毎回新鮮味を感じる。
特に今作はフランス等の欧州映画ほど映像から感じる暗さ、重さ、気怠さなどは感じずに観ることが出来るので、普段劇場でやっているような話題作的なものしか観ない人でも気軽に楽しめるのではないだろうか。
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