『スターリンの葬送狂騒曲』感想・紹介・レビュー【共産主義のコメディ】
スターリンの葬送狂騒曲
2017年に公開されたイギリス・フランスの歴史コメディ映画。
監督・脚本をアーマンド・イアヌッチ、共同脚本をデヴィッド・シュナイダー、イアン・マーティン、ピーター・フェローズが務めた。
出演
- スティーヴ・ブシェミ
- サイモン・ラッセル・ビール
- パディ・コンシダイン
- ルパート・フレンド
- ジェイソン・アイザックス
- マイケル・ペイリン
序盤のあらすじ
1953年のソ連・モスクワ。
ラヴレンチー・ベリヤ率いるNKVDは「粛清リスト」に基づく国民の逮捕粛清を実行し、ヨシフ・スターリンに対する国民の畏怖は、スターリンがラジオ生放送のコンサートの録音を欲すると関係者が急遽再演奏するほどになっていた。
コンサートのピアニストを務めていたマリヤ・ユーディナは、家族が受けた処分からスターリンを恨み、録音盤にスターリンを罵倒するメモを忍ばせた。
届いた録音盤を執務室で聞いていたスターリンは床に落ちたメモを拾って内容を目にすると笑い飛ばしたが、その直後に意識を失い、昏倒する。
執務室の外で警備に当たっていた二人の兵士はスターリンの倒れる音を聞き、一方は「中を覗いた方がいい」と言ったが、もう一方はそれに「黙れ。二人とも処刑される」と答え、結果二人とも執務室に入ることはなかった。
引用:Wikipedia
今作は、フランスのグラフィックノベル『La mort de Staline(スターリンの死)』を原作とし、1953年にソビエト連邦の独裁者スターリンが死去したことによって引き起こされた、ソビエト連邦内の権力闘争をメインに暗く重いロシア史の数ヶ月をコミカルに描き、まるでそれが数日間の出来事かのように思えるほど気軽に観ることの出来る作品。
実際の出来事をベースに描かれている作品ではあるが、細かい部分は歴史的には正しくない部分もあるのであくまでも歴史ドラマとして観る事をオススメする。
勿論、この当時の歴史の大局を抑える分には十分な出来にはなっているが、歴史を学ぶものとしてはあまり適していないので注意。
基本的にはスターリンの死をきっかけに後継者たちの権力闘争を描いたブラックコメディなのだが、演出としてはっきりとコメディという色付けをしているようなシーンは少ない。
しかし、視聴者ははっきりとコメディとしての印象を受けると思う。
それは共産主義体制という物自体が、共産主義ではない第三者の国や人から見ればそれだけで充分コメディとして見ることが出来てしまうからだろう。
代表例としては最近はあまり見ないが、一時期はやたらとニュースで目にしたであろう北朝鮮の国営放送や各種報道などは割とコメディチックに見える人が多いのと同じ。
今作はフィクションであり、コメディなので単純な娯楽映画として楽しむことも出来るのだが、実は相当毒強くもあり共産主義の本質を見事に表現している作品でもある。
人への敬意や人としての尊厳が感じられないディストピア的に、一般市民はおろか党幹部ですら友人、家族さえも信じることが出来ずに終始疑心暗鬼に陥っている様子が描かれているのも魅力の1つ。
そしてその疑心暗鬼に陥っている登場人物の心理描写が非常にしっかりと上手く、コメディ感や誇張は勿論あるのだが、変に過剰な演出がないのもあって内容的には割と真面目なのではと思わせる部分もあったりして面白い。
結果的にはコメディ、ブラックジョークと受け取る人が多いとは思うが。
歴史的に正しくないというような理由で各方面から色々言われている今作だが、映画の手法としてあえて誇張することによって本質をくっきりと浮かび上がらせることを成功させている見事な映画と言えるだろう。
小ネタ
2017年9月、ロシア文化省の高官は「社会の隆起を引き起こしロシアを不安定化させる西側の陰謀」という主張をして、作品の上映禁止を検討していると述べた。
今作は、ロシア・ベラルーシ・カザフスタン・キルギスで上映禁止となった。
ユーラシア経済連合の中ではアルメニアのみが上映を許可した。
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