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『グッバイ、レーニン!』感想・紹介・レビュー【国の崩壊と母親】

グッバイ、レーニン!

グッバイ、レーニン! (字幕版)

 

2003年に公開されたドイツのコメディ映画。
監督・脚本をヴォルフガング・ベッカー、共同脚本をベルント・リヒテンベルクが務めた。

出演
  • ダニエル・ブリュール
  • カトリーン・ザース
  • チュルパン・ハマートヴァ
  • マリア・シモン
  • フロリアン・ルーカス
  • アレクサンダー・ベイヤー
  • ブルクハルト・クラウスナー

 

1990年10月3日に起こった東西ドイツ統合後のドイツを舞台とし、庶民の身に起こった悲喜劇を家族像と共に社会風刺も盛り込みつつ、コミカルに描いた今作。
東ドイツ崩壊という大事件を、反体制デモに参加した自分のせいで倒れてしまい未だ病床の母親に知らせない様に知らせない様に主人公が奮闘するという、荒唐無稽と言ってしまえば荒唐無稽な話。

 

確かに基本的にはコメディタッチで、荒唐無稽なだけに見えるかもしれない。
しかし、それ以外にしっかりとメッセージ性のある作品に仕上がっている。
作品を通して、社会主義という統制された社会への風刺的な意味合いを持っていると視聴者に感じさせたかと思いきや、実は資本主義という物資社会への風刺が秘められている事に気付きハッとさせられる。

 

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社会的なメッセージを押しつけがましい感じを出来るだけ排除して、実際にあった歴史的な出来事を題材として万人が観やすいようにコミカルに描き、映画として成立させている。

 

現実的には中々その展開は流石に厳しいだろうと思ってしまう部分が無いわけではないが、奇跡的に意識を取り戻した母親にこれ以上辛い思いをさせまいと、愛する母親の為に必死に奮闘する主人公とその周囲の人たちに、胸が熱くなるような部分もあり、観ているといつの間にか主人公に感情移入している自分が居た。

 

展開のさせ方も変に説明口調になるようなことはないのだが、俳優陣の演技力もあってすんなりとこの作品の世界観の情報が入ってくる。
自分がある程度、この時代の歴史的知識があるからなのかもしれないが、東ドイツの崩壊によって変化していく市民の生活をリアルに描いてるのもあって純粋に分かりやすい。
また、中弛みすることなくラストまでテンポよく駆け抜けるような作りになっているのも、その一因かもしれない。

 

序盤のあらすじ

東ドイツの首都東ベルリンに暮らす主人公のアレックスとその家族。

母のクリスティアーネは夫のローベルトが西ドイツへ単独亡命して以来、その反動から熱烈に社会主義に傾倒していた。

そんな家庭環境の中、東ドイツ建国40周年記念日である1989年10月7日の夜に、アレックスは家族に内緒で反体制デモに参加、街中で警官ともみあっていた。

それを偶然通りがかったクリスティアーネが目撃。

強いショックから心臓発作を起こして倒れ、昏睡状態に陥る。

彼女は二度と目覚めないと思われたが、8ヶ月後に病院で奇跡的に目を覚ます。

しかし、その時にはすでにベルリンの壁は崩壊、東ドイツから社会主義体制は消え去り、東西統一も時間の問題となっていた。

引用:Wikipedia

 

 

人によってはタイトルのイメージからもっと社会的なメッセージを打ち出した作品と、思ってしまうかもしれないが、壁の崩壊や検問の廃止や政治的な内容を描いた作品は沢山存在する。


今作はそういった社会性メッセージの強い映画とは一線を画す内容で、旧東ドイツの体制を支えてきた人たちが、ベルリンの壁崩壊後の統一ドイツという1つの国の中で社会になじめず、様々な事に戸惑っている様子を国の情勢などと共に滑稽に描かれていて、現代における価値観の変化や転換を庶民的なレベルでしっかりと伝わってくる。

 

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果たしてアレックスは、いつまで母親にドイツが迎えた大きな変化を知らせない様にしていられるのか。
コメディ映画として観ても見応えは十分、風刺的な内容を観て国という物や人という物を考えるのも良し。

 

 

 

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