洋画な日常

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『インサイダー』感想・紹介・レビュー【告発と圧力】

インサイダー

インサイダー(字幕版)

 

1999年に公開されたアメリカ合衆国のドラマ映画。
監督・脚本をマイケル・マン、共同脚本をエリック・ロスが務めた。

出演
  • アル・パチーノ
  • ラッセル・クロウ
  • クリストファー・プラマー
  • ダイアン・ヴェノーラ
  • フィリップ・ベイカー・ホール
  • リンゼイ・クローズ

 

序盤のあらすじ

ある日、CBSの人気ドキュメンタリー番組『60 Minutes』のプロデューサー、ローウェル・バーグマン(英語版)の元に匿名で書類が届けられる。

それはタバコ産業の不正を告発する極秘ファイルだった。

彼はアメリカの大手タバコメーカーB&W社で研究開発担当副社長を務めたジェフリー・ワイガンドに接触し、インタビューに応じるよう説得する。

マスコミとの接触を知ったB&W社に圧力をかけられたワイガンドは苦悩するが、『60 Minutes』のインタビューに応じ、法廷で証言することを決意。

引用:Wikipedia

 

今作は『ラスト・オブ・モヒカン』(92年)『ヒート』(95年)に続く、リアリティ重視の本格社会派作品を描かせたら右に出る者は居ないであろうマイケル・マン監督が、実話をベースにアメリカのタバコ産業の不正を告発したTVプロデューサーと大手タバコ会社副社長を描いた社会派サスペンス。

 

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『ヒート』のような分かりやすい見どころとしての派手な銃撃シーンがあるような作品ではないのだが「人対人」「心対心」の描写が素晴らしく、違った意味で熱く激しい攻防が繰り広げられる様は観進めているとどんどん引き込まれていく。

 

企業法務、法廷闘争、報道機関などからの外部圧力との目を見張る闘いの様子をリアリティを徹底的に追求し作られたことが分かる脚本、複雑な状況下に置かれた登場人物の不安定な精神状態、心理状態を説明的になってしまうことがないように緻密且つ大胆なカメラワークはマイケル・マン監督の魅力を存分に感じることが出来る。

 

そしてその練られた作品を更に昇華させているのが、アル・パチーノとラッセル・クロウだ。
主人公であるアル・パチーノは勿論言うまでもなく素晴らしい演技力を魅せつけてくれているのだが、今作はそれに隠れてしまいがちなラッセル・クロウの素晴らしい演技に注目したい。

 

彼の私生活でのトラブルやスキャンダルを気にしてしまうと純粋な評価をされにくい。
”俳優”としてだけ見ると、作品に対してどの作品にも真摯に向き合い役柄を理解し、それでいて彼しか表現の出来ないようなやり方で演じている。
一概に言える事ではないと思うが、アクターズスタジオ出身(アル・パチーノも同様)というのも納得の演技力。

 

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この2人が演じるキャラクターの設定もあり、観る人の年代によって感情移入先が変わってくる。
ある程度年齢を重ねている人はアル・パチーノ演じるバーグマンで、若い世代の人はラッセル・クロウ演じるワイガンドになるのではないだろうか。
なので個人的には若い頃に観たことあるよって人には、是非もう1度視聴して貰いたい。

 

企業と自らの家族の板挟みのような状況下で、インタビューに答えるという難しい判断。
悩んだ末に判断をしたのにもかかわらずそこに降りかかる圧力。

日本でも企業による偽装事件に対しての内部告発制度が徐々に整備されてきてはいるが、アメリカ合衆国という既得損益を優先したロビー活動を盛んに行う国での内部告発者の葛藤と苦悩、メディアやマスコミによる告発者の保護の難しさが痛いほど伝わってくる。

実話ベースの作品でも脚色によってリアリティに欠ける作品が多い中、むしろ痛々しさを感じるほどリアルに描き、どんな人でも何かしらの形で属することとなる人間構造の中、降りかかる理不尽にどう対処するべきなのかということを改めて考えさせられる素晴らしい作品だった。

 

 

 

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