『アメリカン・スナイパー』感想・紹介・レビュー【1人の兵士のヒューマンドラマ】

アメリカン・スナイパー

アメリカ合衆国で製作され、2014年に公開された伝記映画である。
原作はイラク戦争に4度従軍したクリス・カイルが著した自伝『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』（原題: American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History）で、脚色はジェイソン・ホール、監督はクリント・イーストウッドが務めた。

出演

• ブラッドリー・クーパー
• シエナ・ミラー
• マックス・チャールズ
• ルーク・グライムス
• カイル・ガルナー

タイトルや、ポスターからいわゆる「戦争映画」と勘違いする人が一定数居るのは仕方ないとは思うが、この作品は主人公の置かれた環境が戦争というだけで、メインはクリス・カイルという1人の軍人がアメリカという祖国を守る為に、任務を遂行する姿を描いた重厚な「ヒューマンドラマ」だ。

この類いの作品では有名な、クリント・イーストウッドが監督を務めているだけあって重厚な映像美、戦争自体というよりも戦争によって変化していく人々やそれを取り巻く環境を素晴らしい描写で描き切っている。

詳細は避けるが、作中にクリスが標的をスコープで覗きながら「（武器を）捨ててくれ」と小声で願う姿からは、任務という中でやっている事とはいえ精神的にどんどん追い込まれて行ってしまう軍人が後を絶たないと良く聞くが、こういう事なんだろうなと痛感した。

序盤のあらすじ

クリス・カイルはテキサス州に生まれ、厳格な父親から狩猟の技術を仕込まれながら育った。

やがて時は経ち、ロデオに明け暮れていたカイルは、アメリカ大使館爆破事件をきっかけに海軍へ志願する。

30歳という年齢ながら厳しい訓練を突破して特殊部隊シールズに配属され、私生活でも恋人タヤと共に幸せな生活を送るカイルであったが、間もなくアメリカ同時多発テロを契機に戦争が始まり、カイルもタヤとの結婚式の場で戦地への派遣命令が下るのだった。

イラク戦争で狙撃兵として類まれな才能を開花させたカイルは、多くの戦果から軍内で「伝説（レジェンド）」と称賛されると共に、敵からは「悪魔」と呼ばれ懸賞金をかけられていた。

引用：Wikipedia

イーストウッド自身が青年期に陸軍に籍を置いていたのもあってか、戦争映画にありがちな暴力的描写だけではなく、戦地に居る兵士や住んでいる場所が戦場になってしまう人たちの心理的な部分も含めた細かい描写が圧巻だった。

ただ個人的に残念だったのは、戦争映画ではありがちと言えばありがちではあるが何だかんだで英雄譚に仕上がってしまっている事。
そもそも、作品の大部分であるイラク戦争というのは大量破壊兵器があるという誤情報（故意ともいうが）でアメリカが始めた戦争。

その辺りを考慮すると後半、特にラストシーンなんかはこういう作りにしちゃうのかぁと思ってしまった。
ありがちな英雄譚にせずに、存在した事実をこの作風と優れた演出で映像化すれば「プロパガンダ」というような評価をされることもなかったのだろう。

そういった惜しい部分もあるが、映画作品としては良く出来ているし「クリス・カイル」の人生を考えると「戦争」というものを様々な角度から考えさせられる素晴らしい作品だと思う。

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