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『バグダッド・スキャンダル』感想・紹介・レビュー【人道支援と不正】

バグダッド・スキャンダル

バグダッド・スキャンダル(字幕版)

 

2018年に公開されたデンマーク・カナダ・アメリカ合衆国の社会派映画。
監督・脚本をペール・フライ、共同脚本をダニエル・パインが務めた。

出演
  • テオ・ジェームズ
  • ベン・キングズレー
  • レイチェル・ウィルソン
  • ジャクリーン・ビセット
  • ロッシフ・サザーランド
  • ベルチム・ビルギン

 

序盤のあらすじ

フセイン大統領時代のイラク。

国民は経済制裁の影響で生活が困窮。

国連は「石油を販売したお金でイラク国民に食料を買い配る」という夢の人道支援プログラムを開始。

しかし現実は、様々な国籍の人間がその計画に群がり食い尽くす悪夢の始まりだった。

莫大な予算ゆえに欲望が渦巻き、汚職、裏切り、殺人が入り乱れ、銀行や実業家、政治家も次々に取り込まれていく。

イラク戦争のその陰で実際に行われていた知られざる衝撃の事実。

引用:2016 CREATIVE ALLIANCE P IVS/BFB PRODUCTIONS CANADA INC.ALL RIGHTS RESERVED.

 

今作は元国連職員であるマイケル・スーサンが自身の体験をもとに執筆した小説『Backstabbing for Beginners』の映画化で、1996年~2003年までの7年間にイラクで実施された石油食糧交換プログラムを土台に、国連史上最悪の政治スキャンダルを描いた作品。
このプログラムは、湾岸戦争後のイラクでの再軍備を防ぐという名目で行われ、石油の販売にて得た利益の使い道の規制を国連が行ったもの。

 

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このプログラムでは日本円に換算して石油輸出に約7兆3600億円、食料品や日用品などの輸入に約4兆2250億円が動いたと言われているが、当時イラク政府は石油を実際公表していた値段よりも安く売り、物資は高く買うことでその値段の差で賄賂を生み出していた。
そしてこれらにはイラク政府だけでなく、プログラムを支援者たちもその不正に関与していた。

 

今作公開後、この不正に関連した汚職調査を国連が拒否したのもあって全容解明には至っておらず、作中で描かれていることが何処まで事実なのか、調査を拒否したという事実だけが残ったが故に実際はもっと酷かったのではと勘ぐってしまうが、作品にはその不正の経緯などの全貌とそれを告発した勇気あるアメリカ人の姿が描かれていて、それはもう酷いという一言では言い表すことが出来ない。

 

この「石油食料交換プログラム」が終了してからこの資金に関する汚職は約2000億円を越えることが明らかになり、その後のアメリカ合衆国政府会計局の調査によると汚職の一部だけでも推定で1兆円を越える汚職であったことが指摘されるも前述した通り国連の調査拒否によって結果は出ずじまい。

 

今作がこの一連の事件を全て描いている訳ではないし、ノンフィクションというわけでもないので全てを真実として真に受けるのはまた違うとは思うが、詳細は別としてこういった本来ならば1つの荒れに荒れてしまった国の困窮する人々を救うはずの人道支援プログラムですら利用し、私利私欲をどうにかして満たそうとする輩が世界中何処にでもいるという事を知るきっかけとしては良い映画なのではないだろうか。

 

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本来ならばこういった不正が起こらないことが当然であり健全ではあるのだが、人が関わるとどこかしらで歪みが生じてしまう。
唯一の救いと言えば、自らの意思で不正を暴こうとする人が少なからず内部に居たという事。


莫大な金が動くプログラムに醜くも群がる国や企業、権力者たちの根深い生臭い不正を事実を基にしてはいるものの、1つの映画として楽しめるようにスパイアクション、クライムアクションのような陰謀や策略などもバランスよく散りばめて目が離せない作品に仕上がっている。

 

 

 

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