『特捜部Q カルテ番号64』感想・紹介・レビュー【現代社会、負の遺産】
特捜部Q カルテ番号64
2018年に公開されたデンマーク・ドイツのサスペンスミステリー映画。
監督をクリストファー・ボー、脚本をボー・Hr・ハンセン、ニコライ・アーセル、ミケル・ノルガードが務めた。
原題:Journal 64
出演
- ニコライ・リー・カース
- ファレス・ファレス
- ヨハン・ルイズ・シュミット
- ソーレン・ピルマーク
- アンダース・ホブ
- ニコラス・ブロ
序盤のあらすじ
「特捜部Q」--過去の未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。
「Q」が今回挑むのは、80年代に起こったナイトクラブのマダムの失踪事件。
調査によるとほぼ同時に5人もの行方不明者が出ているという。
カール警部補は大事件の匂いを嗅ぎつけ捜査に着手。
やがて、壮絶な過去を持つひとりの老女を新進政党の関係者が捜査線上に浮かび上がってくるのだが......。
引用:(C)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS20,ZENTROPA BERLIN,ZENTROPA HAMBURG
今作は、ユッシ・エーズラ・オールスンが2010年に発表したミステリー小説『特捜部Q』シリーズ4作目でベストセラーとなった『特捜部Q-カルテ番号64-(原題:Journal 64)』を原作とし、未解決事件の捜査を進めていった先に予想だにしない様々な事実が明らかになっていく様を分かりやすい演出と、見応えのある展開で描いた作品。
『特捜部Q』シリーズリスト
- 特捜部Q-檻の中の女-
- 特捜部Q-キジ殺し-
- 特捜部Q-Pからのメッセージ-
- 特捜部Q-カルテ番号64- ⇦これが今作である4作目
- 特捜部Q-知りすぎたマルコ-
- 特捜部Q-吊るされた少女-
- 特捜部Q-自撮りする女たち-
- 特捜部Q-アサドの祈り-
一応カテゴリー的には「サスペンス」「ミステリー」とはなるのだが、映画という作品の中ではそこまで珍しい話ではなく「よくある話」なので、難解で複雑なサスペンス的な展開を期待してしまうと物足りないかもしれない。
しかし、一方で移民問題や民族差別に果敢に踏み込んだ内容となっているため、良く作られた「社会派」な映画をサスペンス風に仕上げたといったところ。
そしてもう1つ、作品を観易くしている要素として主要な登場人物たちのキャラクター設定だろう。
無愛想で不器用な上、人に何言われても治す気配のないカール。
そんなカールに何を言われても行動を共にするアサド。
そしてそんな2人の間を取り持つために奮闘するローセ。
この3人が何だかんだ言いながらも見事なチームワークで事件に挑んでいく様によって、扱っているテーマの重さや暗さをそこまで感じさせずに観る事が出来ているような気がした。(それでも扱っているテーマ自体は繰り返してはならない人の闇の部分だとは思うので苦手な人は注意)
そんな映像の中からは、どこか暖かみを感じさせてくれながらも無駄のないデザインをしたインテリアや、ゆとり教育の元祖と言われる教育現場、高福祉社会。
いずれからも北欧社会の良さ、負の側面どちらもパッケージングしているような雰囲気を感じさせられる。
詳細はネタバレになるので避けるが、日本でも実はつい最近と言っていいほど現代まで続いていた、とある法律を思い起こさせるような気色悪さもしっかりと描かれている。
原作が有名シリーズなのもあって読んだことのある人の場合、賛否両論あるとは思う。
しかし、北欧特有の雰囲気をしっかりと醸し出しつつも現代に通ずつ社会的なテーマを、重く演出しすぎることなく分かりやすく伝える事に成功している作品なので興味のある人は是非観てみてはいかがだろうか。(その上で原作読むとそれはそれで面白い)
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