洋画な日常

洋画まみれな人がネタバレを避けて紹介していくブログ

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『ビバリーヒルズ・コップ』感想・紹介・レビュー【痛快刑事アクション】

ビバリーヒルズ・コップ

ビバリーヒルズ・コップ (字幕版)

 

1984年に公開されたアメリカ合衆国のアクションコメディ映画。
監督をマーティン・ブレスト、脚本をダニエル・ペトリ・Jrが務めた。

出演
  • エディ・マーフィ
  • ジャッジ・ラインホルド
  • ジョン・アシュトン
  • リサ・アイルバッハー
  • ロニー・コックス
  • スティーヴン・バーコフ

 

序盤のあらすじ

腕はいいが問題ばかり起こし、上司のトッド警部からも見放されたような状態の、デトロイト市警察本部に所属する若手刑事アクセルは、ビバリーヒルズからやってきた幼馴染のマイキーと再会するが、その夜にマイキーが殺害される。

マイキーの仇討ちを決意したアクセルは、犯人を追って単独でビバリーヒルズに乗り込み、昔馴染みのジェニーに接触する。

アクセルは、マイキーがジェニーの紹介で画商メイトランドに雇われていたことを聞き出し、メイトランドに会いに行くが一蹴され、駆け付けたビバリーヒルズ警察に逮捕される。

引用:Wikipedia

 

今作は、アメリカの高級住宅街であるビバリーヒルズへと単身出向くことになったデトロイト市警の刑事アクセル・フォーリーが親友を殺した犯人を捕まえるために、ビバリーヒルズを駆け回るさまを描いたドタバタノンストップアクションコメディー作品。
そして今作はエディ・マーフィの映画初主演作であるとともに、アソシエイトプロデューサーも務めた作品となっている。

 

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まさしくこの時代を代表するエンターテインメント作品と言えるだろう。
40年近く前(2021年現在)の作品にも関わらず、フィルムで撮影されているのもあり映像が観やすく綺麗。
エディ・マーフィ自身から醸し出される陽気な雰囲気も相まって、作品自体の雰囲気も明るく笑えてスピーディーなのも魅力。

 

同じようなテーマで現代的に作ると、想像を絶する強大な黒幕が居て複雑な伏線を散りばめてやや重め暗めに構成されるだろう。
そこを現実的な黒幕と分かりやすいストーリー展開、見応えはあるもののコミカルで軽めなタッチで描いていて古き良き映画という表現がピッタリ。

 

言ってしまえば、はみ出し者の刑事がありがちな復讐劇を演じるという余りにも使い古された設定ではある。
そんな使い古された設定なのにも関わらず、現代に通用する面白さがあるのは何故なのか。
人それぞれその答えはあるとは思うのだが、個人的に1番は主人公の魅力が大きいと感じている。

 

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エディ・マーフィ演じるアクセル・フォーリーの、その憎めない人たらしっぷりは見ていて清々しさすら感じる。
そして彼の天性の物かもしれない会話術は妙な説得力を持ちつつ、勢いであれよあれよと相手を丸めこんでしまう。
この会話センスと作品自体の陽気なテンポが絶妙に絡み合っているが為に、エンターテインメント作品として不動の人気を誇っているのだと思う。

 

それでいて時折見せる真面目で有能な刑事を彷彿とさせる表情とのギャップも良い。
終始ハチャメチャと思われがちだが、いわゆる緩急がしっかりとしていて乗るところはこれでもかと乗って、締めるところはしっかりと締める。

 

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今同じような設定で映画を作ったとして、ここまで満足度が高くエンターテインメント性に優れた作品が作れるか?と言われると難しい気がしている。
勿論、初見が子供の頃だったということもあって若干の補正がかかってしまっているとは思うのだが、大人になった今見返しても充分楽しめる作品だ。



小ネタ

この作品、企画当初はシルベスター・スタローンが主演する予定だったが、予算の都合でマーフィに主演が交代することになった。
この企画当初、スタローンの要請で脚本やタイトルが変更されていたのだが、それを更に書き換えた物がスタローン主演で公開された『コブラ』。

 

 

 

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『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』感想・紹介・レビュー【生きるということ】

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス(字幕版)

 

2016年に公開されたアイルランドとカナダの伝記映画。
監督をエイスリング・ウォルシュ、脚本をシェリー・ホワイトが務めた。

出演
  • サリー・ホーキンス
  • イーサン・ホーク
  • カリ・マチト
  • ガブリエル・ローズ
  • ザカリー・ベネット
  • ビリー・マクレラン

 

序盤のあらすじ

カナダの小さな港町で叔母と暮らすモードは、絵を描くことと自由を愛していた。

ある日モードは、魚の行商を営むエベレットが家政婦募集中と知り、自立のため、住み込みの家政婦になろうと決意する。

幼い頃から重いリウマチを患い厄介者扱いされてきたモードと、孤児院育ちで学もなく、生きるのに精一杯のエベレット。

はみ出し者同士の同居生活はトラブル続きだったが、徐々に2人は心を通わせ、やがて結婚。 

一方、モードの絵を一目見て才能を見抜いたエベレットの顧客サンドラは、彼女に絵の創作を依頼。

モードは期待に応えようと、夢中で筆を動かし始める。

そんな彼女を不器用に応援するエベレット。

いつしかモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン大統領からも依頼が来て……。

引用:©2016 Small Shack Productions Inc./ Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.

 

今作は、カナダのノバスコシア州ヤーマス群出身のフォークアートの画家であり、正式な美術教育を受けたことがなかったにも関わらず、カナダで愛された画家モード・ルイスの生涯をカナダの美しい風景と彼女の美しい作品を盛り込みながら描いた作品。

 

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モード・ルイス(1903.3.7-1970.7.30)とは

カナダのフォークアートの画家。
田舎の風景、自然と共存する動物たち、草花などをモチーフにした明るく暖かい色彩とシンプルなタッチで、柔らかく幸福感のある絵を描いた。
人生のほとんどが貧しい生活で、生涯を通してカナダ・ノバスコシア州のヤーマス群とディグビー群のみで生活をしていた。

 

モード・ルイスという画家は絵画を含む、美術関連の物にそこまで興味のない人たちは知らない人が多いかもしれない。しかし今作はそういった彼女を知らない人でも、彼女の体験した人生や生み出した作品たちを知り、感じることができるので観終わった後に彼女の作品を生で観てみたいと思える事だろう。

 

彼女を知っている人だとしても、今作のストーリーは彼女の生涯が1時間55分という1つの作品の中で忠実に描かれ、作品そのものが彼女の世界とリンクしているかのようにすら感じる事ができるほどに丁寧に作られているので、知っていたとしても知らなかったとしても満足できると思う。

 

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そしてこの作品の舞台のメインとなる彼女の家や境遇は決して「恵まれている」「幸せそう」には見えづらい。
そんな殺風景で何もなく、冬ともなれば大雪で家から一歩出るのにも苦労するような世間から取り残された場所にすら見える場所は、他の人からすれば幸せは勿論のことその生活に彩りなど感じることは難しいだろう。

 

しかし彼女はその生活に自らの「絵」で「色」を生み出していく。
その絵は決して派手でもなく壮大な見た目ではなく、晴れ渡る空のように穢れのない温かい彼女が見ている風景。
多くの人が気付きにくい、気付かないふりをしている状況で彼女だけがその景色を彩っていくその様は「幸せ」というものを改めて考えさせてくれる。


こんなにも心の奥底に沁み込んでくる映像は中々出会えない。
2人で生きることを大切にしようとした2人のささやかな幸せ。
静かで儚くも美しい映像と美しい物語が見事に調和した素晴らしい作品だった。

 

 

 

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『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』感想・紹介・レビュー【幸せな作品】

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります(字幕版)

 

2014年に公開されたアメリカ合衆国のコメディドラマ。
監督をリチャード・ロンクレイン、脚本をチャーリー・ピータースが務めた。

出演
  • モーガン・フリーマン
  • ダイアン・キートン
  • シンシア・ニクソン
  • キャリー・プレストン
  • クレア・ヴァン・ダー・ブーム
  • マイケル・クリストファー

 

序盤のあらすじ

長年ずっと連れ添ってきたカーヴァー夫妻は、40年住み慣れた5階にある眺めの良い部屋を「エレベーターがない」という理由で売却しようと試みる。

 昔は下町だったイースト・ヴィレッジも今ではおしゃれなエリアとなり、二人の部屋にもちょっとした値がつくようになっていた。 

内覧会を開催することになるが、その前日、年老いた愛犬が急病を発症、成功確率6割の手術を受けることに。 さらに近所でテロ騒動が勃発。

ふたりの若かりし頃を挿入しながら不動産交渉と共に物語は展開していく。

 引用:Wikipedia

 

今作は、2009年にジル・シメントが発表した小説『眺めのいい部屋売ります』を原作とし、画家の夫アレックスと元教師の妻ルースが40年間暮らしたブルックリンを一望できる最高の眺めの家を売るという単純明快なストーリーを、夫婦の過去回想を織り交ぜながら描いた作品。

 

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物語の展開的には、特に事件性があるわけでもなく山や谷があるわけでもない淡々としたストーリーではあるのだが、夫婦の出会いを含めた2人の若い頃の描写が話の要所要所にサラッと挿入されていて、2人の歩んできた人生がストーリーを通してすんなりと入ってくる。
その上、作品の中に過去回想がある作品の場合はそれ自体が長かったり、無駄なシーンとなってしまっていることが多いのだが、今作は必要最低限に収めつつもしっかりと理解出来る内容になっているのが素晴らしい。

 

そしてその過去回想のシーンで老夫婦の若い頃を、コーリー・ジャクソンとクレア・ヴァン・ダー・ブームが演じているのだが、この2人がまた良い演技。
見た目とかそういうことではなく、映像から感じ取ることの出来る印象が本当に2人の若い頃のように見えて一種の驚きがあるくらいだった。
映画の上映時間1時間32分の中では短い時間でしかないのだが、重要なシーンでもあるのでこういった細かい部分の描写が丁寧になされているのは評価が高い。

 

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勿論言うまでもなく、老夫婦を演じたモーガン・フリーマンとダイアン・キートンは素晴らしいの一言。
演技をしているとは思えないほどのナチュラルな老夫婦を表現しきっていて、この2人が本当に夫婦なのではと錯覚させられるほど息が合っている。
それに加えお互いがお互いの魅力を引き立たせるかのような演技は流石。

 

そして邦題が悪くないと思ったのは珍しい。
まぁ、原作をサブタイトルにあてがっただけと言えばそれだけの話なのだが、それが出来ない邦題の多いこと多いこと。
原題は『5 FLIGHTS UP』で訳すと”5階分の階段を上る事”となる。
作品のテーマとなっている夫婦の家である物件の状態を示してはいるのだが、個人的には邦題に採用された原作のタイトルの方が惹かれたし分かりやすい。


話の展開が現実的じゃないという声もたまに見かけはするが、老夫婦が笑うだけでリンクしているかのようにこっちまで幸せな気分になれるストーリーが好きな人にはピッタリなのではないだろうか。
常に身近に存在していると気付きにくい「普通」ということの幸せ。
そして日常に満足出来ることの幸せや様々なことを淡く考えさせてくれる作品だった。

 

 

 

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『シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~』感想・紹介・レビュー【流れるように進むコメディ】

シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~

シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜 (字幕版)

 

2012年に公開されたフランスのコメディ映画。
監督・脚本をダニエル・コーエン、共同脚本をオリヴィエ・ダザが務めた。

出演
  • ジャン・レノ
  • ミカエル・ユーン
  • ラファエル・アゴゲ
  • ジュリアン・ボワッスリエ
  • サロメ・ステヴナン
  • セルジュ・ラヴィリエール

 

序盤のあらすじ

料理人のジャッキーは数多くの有名シェフのレシピを完璧に暗記する才能を持ち、天才料理人を自称している。

しかし、料理へのこだわりから客や同僚とたびたびトラブルを起こし、ひとつのレストランに腰を落ち着けることができなかった。

ジャッキーは恋人のベアトリスが妊娠したことをきっかけに、安定した収入を得るために料理人をやめてペンキ職人として働き始める事になる。

一方、20年来の三ツ星レストラン「カルゴ・ラガルド」の超一流有名シェフであるアレクサンドルは料理への閃きを失い、このままでは次の審査で星を失いかねないという危機に直面していた。

引用:Wikipedia

 

今作は、超高級フレンチレストランの1人のベテランシェフが危機に陥った中で、天才的な舌を持つペンキ塗りのジャッキーと出会い、ジャッキーと何故か素人シェフも仲間に加わり、問題だらけの寄せ集め料理人たちがレストランを救うために立ち上がり奮闘する様をコミカルに描いた作品。

 

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ストーリーの脚本的には新しさを感じる物でもなく、特に意表を突かれるような展開も正直あるとは言えない。
こういったコメディのネタはよくあると感じる人が多いとは思うのだが、このシンプルかつ単純な脚本を見事に演出や俳優陣の演技力が、見事に作品として成立させている。
冒頭からラストまで、まるで実際のベテランシェフがコース料理を流れるようにスムーズに作っていく様な感覚にさせてくれる。

 

脚本がもっと練られていたりしたらこの流れるようなテンポになったかと言われると、少し難しいだろう。
この脚本だからこそこの仕上がりが可能で、リラックスしてサラっと観る映画として最適とも言える作品になっている。

 

ストーリー自体の分かりやすさ、雰囲気の明るさで観易いのに加え登場人物の魅力もこの作品の楽しさの1つ。
作品に出てくる老人ホームの3人を含め、とても愛らしい。
そしてジャン・レノが演じたアレクサンドルが、また良いキャラをしている。
序盤こそ、いわゆる典型的な職人気質で頑固そうとか気難しいと言われるタイプではあるのだが、ストーリーの進行と比例して笑みをこぼすようになったり、どんどんと柔和なおじちゃんになっていくのを観ているとこっちまで幸せな気分になる。

 

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そしてただコミカルなだけでなく、きちんと「レストラン」としての魅力もタップリ。


伝統的なフランス料理を華麗に作り上げる様子

様々な皿に盛られた色とりどりの料理

食卓に並べられる美しいデコレーションのスイーツ


どのシーンも観ているだけで食欲をそそられてしまうことだろう。

 

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普段自分が、それなりに難しめのテーマを用いた作品や社会派な作品を観る事が多いということもあるとは思うが、久しぶりにこんなにも心がほっこりして暖かい気持ちになる作品を観た感覚だった。
冒頭にも触れたが、決して山や谷があって見応えのある作品とは言えないかもしれない。
しかし、分かりやすいストーリーが魅力あふれる登場人物たちや、映像から香りすらしてきそうなほど美味しそうな料理の数々に彩られ、流れるように進み時間も1時間24分という時間に収められているので、素晴らしい作品だと言えるだろう。

 

 

 

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『マネー・ショート 華麗なる大逆転』感想・紹介・レビュー【異端者たち】

マネー・ショート 華麗なる大逆転

マネー・ショート華麗なる大逆転 (字幕版)

 

2015年に公開されたアメリカ合衆国のドラマ映画。
監督・脚本をアダム・マッケイ、共同脚本をチャールズ・ランドルフが務めた。
原題「The Big Short」

出演
  • クリスチャン・ベール
  • スティーヴ・カレル
  • ブラッド・ピット
  • ライアン・ゴズリング
  • スティーヴ・アイズマン
  • フィン・ウィットロック

 

序盤のあらすじ

大手銀行、メディア、政府が否定した世界経済の破綻を予見した4人のアウトサイダーたちの物語。
2004年から2006年、アメリカ合衆国では住宅価格が上昇したことで住宅ローンの債権が高利回りの金融商品として脚光を浴びていた。
多くの投資家たちがその状況下で金融商品を買いあさる中、いち早くバブル崩壊の兆しを読み取った投資家もいた。
そんな彼らはどのようにしてサブプライム住宅ローン危機の中で巨額の利益を上げたのか・・・。

 

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今作は、2010年にマイケル・ルイスが発表したノンフィクション作品『世紀の空売り 正解経済の破綻に賭けた男たち』を原作とし、世界中に影響を及ぼしたアメリカ合衆国のサブプライム住宅ローン危機を発端とした経済危機の中で、巨額の利益を得た4人のドラマを描いた作品。
タイトルに入っている「ショート」というのは「空売り」という意味。

 

サブプライム住宅ローン危機とは

2007年-2009年を中心としてアメリカ合衆国で起きた、住宅購入用途向けのサブプライムローンの不良債権化のことを指している。
サブプライムローンへの投資を証券化して金融商品としての取引を可能にした「サブプライム・モーゲージ」は市場で価格が下落して、リーマン・ショックを代表する経済問題に発展した。

 

この「サブプライム住宅ローン危機」という言葉だけでなく、今作には様々な金融用語やその他専門用語が基本的には説明もなく次々と出てくる。
説明をしてしまうとテンポが崩れてしまったりするのもあって、この辺りは難しい所ではあるのだろう。
しかし、それが故にあくまでも個人的にだが今作は用語は勿論、用語の表面的な意味だけでも分かっていると話への没入感が増してスムーズに観る事が出来ると思う。

 

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出てくる用語を少しだけ紹介。

  • MBS (不動産担保証券)
  • CDO (債務担保証券)
  • CDS (債権の保険商品)

こういった用語がポンポンと出てくるので、観る前に少しだけでも金融用語を調べておくと作品の理解度が深まると思うのでオススメ。

 

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ただ、用語を知らなかったとしてもある程度は問題なく楽しめるとは思う。
人間の特徴とも言えるのかもしれないが、調子のいい時は小さい事や細かい綻び、兆候などに気付いたとしても気付かないふりをする。
そして気付き指摘した人間が居ればそれを「あり得ない」「馬鹿だ」などと嘲笑する。
人間が自分の都合のいいように解釈し、そのような状況にある時どれだけ盲目になるのかといったような様々な人間模様も丁寧に描いている。


そして映像としての技術も素晴らしい点が多い。
映像の処理の仕方、新鮮味のあるカメラワーク、視聴者に向かって登場人物が語りかけてくるようなシーンの演出、話の切り替えのテンポなど挙げるとキリがない。
そして専門的な内容ではあるのだが、こういった映画にありがちな「くどさ」は全く感じなく、ドキュメンタリー映画を観ているという印象を余り感じないくらい観易い作品だと感じた。

 

 

 

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『ノア 約束の舟』感想・紹介・レビュー【神と人】

ノア 約束の舟

ノア 約束の舟 (字幕版)

 

2014年に公開されたアメリカ合衆国の叙事詩的ドラマ映画。
監督・脚本をダーレン・アロノフスキー、共同脚本をアリ・ハンデルが務めた。
原題:Noah

出演
  • ラッセル・クロウ
  • ジェニファー・コネリー
  • レイ・ウィンストン
  • エマ・ワトソン
  • ローガン・ラーマン
  • アンソニー・ホプキンス

 

序盤のあらすじ

創世記の時代、アダムとイブはエデンの園を追われた後、カインとアベルとセトの3人の子どもをもうける。

番人と呼ばれた光の天使たちは、アダムに人間の愛と弱さを感じ、神に背いて彼らを助けてあげたために堕天使となり、泥の塊のような姿に変えられ天上界に帰る事ができなくなっていた。

カインはアベルを殺し、その子孫たちは堕天使から創造する事を教えられ、文明を築くことができた。しかし人間はいつしか堕天使を裏切り倒してしまう。

それに抵抗したのが唯一神の創造物を大切に守り続けてきたセトの子孫、メトシェラであった。

引用:Wikipedia

 

今作は、アロノフスキーが第7学年の時に興味を抱いた世界で最も有名なミステリーと言っても過言ではない ”ノアの方舟” を基に作られ、世界の終焉に立ち向かう1人の男の孤独な闘いを圧倒的なスケールと映像技術で描いた作品。

 

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作品を観る上でかなり注意して欲しいのだが、今作は『聖書』や『創世記』を忠実に再現しているような作品ではない。
あくまでもそれらが世界観のベースとなっているだけであって、『聖書』の原型の影も形もとどめていない1つのフィクション作品という前提で観ることをオススメする。
(正教会の司祭からは「『47RONIN』くらい原作を破壊している」と言われている)

 

そして作品が作品なだけに、キリスト教徒・ユダヤ教徒・ムスリムなどから様々な意見が出ている。
しかし無神論者の立場から観れば、無神論者が抱いている「神が沈黙している理由」などが作品内で示されていたりと、娯楽として純粋に楽しむ作品というよりも色々と考えさせてくれる作品として成り立っていると感じた。

 

肯定的な意見として、ワシントン・ポストのキャスリーン・パーカーは

  • 『ブレイブハート』
  • 『グラディエーター』
  • 『スター・ウォーズ』
  • 『ロード・オブ・ザ・リング』
  • 『インディ・ジョーンズ』
  • 『タイタニック』

この作品のうち2本以上が好きなのであれば今作も好きになれるだろう、評している。

 

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その一方否定的な意見として、ザ・ニューヨーカーのデヴィッド・デンビーは

「大激流、デジタル戦闘、環境保護主義者の怒りの壮大なごちゃ混ぜで、ここ数年(2014年当時)で最も狂った大作映画である」

と評していたりと、観る人を選ぶのは言うまでもないくらいかもしれない。
タイトルを『ノア 約束の舟(原題:Noah)』としなければ、ここまで否定的な意見もなかったような気もするが。

 

個人的には映画という作品として考えれば、映像や演出に様々なアイディアはどれを取っても素晴らしい物だと感じたし、俳優陣の細かい演技も称賛に値するものだった。
願わくば、今作を観る人にはタイトルやレビューなどから感じてしまう「先入観」を一切合切取り払ったうえで視聴し、自らの心で判断してみてほしい。



小ネタ

イスラムの教えに反するという政府見解によって、バーレーン、イラン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、マレーシア、インドネシア、エジプトでは公開が禁止された。
パキスタンでも上映はされていないが、DVDでの視聴は可能となった。

 

 

 

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『ザ・シークレット・サービス』感想・紹介・レビュー【古き良きサスペンスアクション】

ザ・シークレット・サービス

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1993年に公開されたアメリカ合衆国のサスペンスアクション映画。
監督をウォルフガング・ペーターゼン、脚本をジェフ・マグワイヤーが務めた。

出演
  • クリント・イーストウッド
  • ジョン・マルコヴィッチ
  • レネ・ルッソ
  • ディラン・マクダーモット
  • ゲイリー・コール
  • フレッド・ダルトン・トンプソン

 

序盤のあらすじ

フランク・ホリガンは長年シークレットサービスを務めるベテラン警護官であり、ダラスでのケネディ大統領暗殺計画の際にも現場に配属されていたが、大統領を守ることが出来ず後悔に苛まれ酒に溺れるようになり、妻子も彼の元を去ってしまう。

アメリカでは大統領の再選キャンペーンが始まっており、フランクは相棒のアルと共に大統領暗殺を計画する男のアパートを捜査するが、そこには男はおらず、フランクの顔にマークが書かれているケネディ暗殺事件の記事が壁に貼られていた。

フランクは、この男が本気で大統領を暗殺しようとしていると感じ、アルに調査を進めるように指示するが、彼の元に「ブース」と名乗る男から大統領を暗殺するとの脅迫電話が届く。

フランクは長年の理解者デヴィッドに大統領の警護チームに自分を編入するように口添えを頼み込む。

引用:Wikipedia

 

今作は、かつてジョン・F・ケネディアメリカ合衆国大統領を守ることが出来なかったが故に、それ以来罪の意識に苛まれ続ける老練なシークレットサービスのエージェントであるフランクと、大統領暗殺を企てる殺し屋との壮絶な闘いを描いた作品。

 

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公開されたのが約30年ほど前(2021年現在)ということもあり、今となっては若干古臭さを感じる作品となってしまっているのは否めない。
しかし、ストーリー展開や設定的には今作後増えてくるタイプの作品のお手本的立場とも言えるかもしれない。
いわゆる、アメリカ合衆国という1つの国が自らの首を自らで締めてしまい、どんどん悪循環へと陥ってしまうという展開は現代でも幅広く使われている。

 

そしてお手本的立場の作品の場合は大抵良い所、悪い所どちらも含んでいる。
今作の場合は現代の作品よりもシンプルで分かりやすく作られていて、難解になりがちなサスペンスを誰でも気軽に楽しめるような軽めなタッチで描いている点。
人によってはそれが物足りなさを感じてしまう可能性はあるが、昨今の練りに練られた伏線などで構成された作品に食傷気味な人にはいい塩梅なのではないだろうか。

 

それに加え登場人物がそれぞれキャラが立っていて魅力的なのも良い。
90歳になった今でも現役バリバリ感の凄いクリント・イーストウッドなので当然と言えば当然かもしれないが、とても60歳を過ぎているとは思えないほどの若々しさ。
そして若い頃からドンドン増す貫禄を感じさせる存在感、表現力。

 

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そんなイーストウッドを取って食わんばかりのジョン・マルコヴィッチ。
ミッチ・リアリーのような冷静で残酷性を多分に持ちながらも、同時に天才的な頭脳を持った人物を演じさせたら右に出る者は居ないと思わされるほどのはまり役。
作中で「皮肉だな・・・。政府は俺に殺しを、お前に守り方を教えた。」に続く台詞があるのだが、前半部分も含めこの台詞が作品を象徴しながらもキャラクターに合っていて、物凄く心に来るものがあった。

 

今まで様々なサスペンスアクションムービーは制作されてきたが、こういった今や古臭いと思われがちな作品こそ、その原点であるということを痛感させられる素晴らしい作品だ。
そして個人的には今観ても満足できる作品だと思っている。



小ネタ

プロデューサーのジェフ・アップルは子供の頃に出会った、第36代アメリカ合衆国大統領リンドン・ジョンソンと彼を警護する黒いスーツにサングラス、イヤホンを身に着けたシークレットサービスの姿から映画化のインスピレーションを得た。
今作は、ハリウッドの映画制作においてデジタル合成技術が本格的に取り入れられた最初期の作品の1つ。

 

 

 

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『特捜部Q カルテ番号64』感想・紹介・レビュー【現代社会、負の遺産】

特捜部Q カルテ番号64

特捜部Q カルテ番号64(字幕版)

 

2018年に公開されたデンマーク・ドイツのサスペンスミステリー映画。
監督をクリストファー・ボー、脚本をボー・Hr・ハンセン、ニコライ・アーセル、ミケル・ノルガードが務めた。
原題:Journal 64

出演
  • ニコライ・リー・カース
  • ファレス・ファレス
  • ヨハン・ルイズ・シュミット
  • ソーレン・ピルマーク
  • アンダース・ホブ
  • ニコラス・ブロ

 

序盤のあらすじ

「特捜部Q」--過去の未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。

「Q」が今回挑むのは、80年代に起こったナイトクラブのマダムの失踪事件。

調査によるとほぼ同時に5人もの行方不明者が出ているという。

カール警部補は大事件の匂いを嗅ぎつけ捜査に着手。

やがて、壮絶な過去を持つひとりの老女を新進政党の関係者が捜査線上に浮かび上がってくるのだが......。

引用:(C)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS20,ZENTROPA BERLIN,ZENTROPA HAMBURG

 

今作は、ユッシ・エーズラ・オールスンが2010年に発表したミステリー小説『特捜部Q』シリーズ4作目でベストセラーとなった『特捜部Q-カルテ番号64-(原題:Journal 64)』を原作とし、未解決事件の捜査を進めていった先に予想だにしない様々な事実が明らかになっていく様を分かりやすい演出と、見応えのある展開で描いた作品。

 

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『特捜部Q』シリーズリスト
  • 特捜部Q-檻の中の女-
  • 特捜部Q-キジ殺し-
  • 特捜部Q-Pからのメッセージ-
  • 特捜部Q-カルテ番号64-  ⇦これが今作である4作目
  • 特捜部Q-知りすぎたマルコ-
  • 特捜部Q-吊るされた少女-
  • 特捜部Q-自撮りする女たち-
  • 特捜部Q-アサドの祈り-



一応カテゴリー的には「サスペンス」「ミステリー」とはなるのだが、映画という作品の中ではそこまで珍しい話ではなく「よくある話」なので、難解で複雑なサスペンス的な展開を期待してしまうと物足りないかもしれない。
しかし、一方で移民問題や民族差別に果敢に踏み込んだ内容となっているため、良く作られた「社会派」な映画をサスペンス風に仕上げたといったところ。

 

そしてもう1つ、作品を観易くしている要素として主要な登場人物たちのキャラクター設定だろう。
無愛想で不器用な上、人に何言われても治す気配のないカール。
そんなカールに何を言われても行動を共にするアサド。
そしてそんな2人の間を取り持つために奮闘するローセ。

この3人が何だかんだ言いながらも見事なチームワークで事件に挑んでいく様によって、扱っているテーマの重さや暗さをそこまで感じさせずに観る事が出来ているような気がした。(それでも扱っているテーマ自体は繰り返してはならない人の闇の部分だとは思うので苦手な人は注意)

 

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そんな映像の中からは、どこか暖かみを感じさせてくれながらも無駄のないデザインをしたインテリアや、ゆとり教育の元祖と言われる教育現場、高福祉社会。
いずれからも北欧社会の良さ、負の側面どちらもパッケージングしているような雰囲気を感じさせられる。
詳細はネタバレになるので避けるが、日本でも実はつい最近と言っていいほど現代まで続いていた、とある法律を思い起こさせるような気色悪さもしっかりと描かれている。


原作が有名シリーズなのもあって読んだことのある人の場合、賛否両論あるとは思う。
しかし、北欧特有の雰囲気をしっかりと醸し出しつつも現代に通ずつ社会的なテーマを、重く演出しすぎることなく分かりやすく伝える事に成功している作品なので興味のある人は是非観てみてはいかがだろうか。(その上で原作読むとそれはそれで面白い)

 

 

 

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