『ハリエット』感想・紹介・レビュー【モーセと言われた1人の人間】
ハリエット
2019年に公開されたアメリカ合衆国の伝記映画。
監督・脚本をケイシー・レモンズ、共同脚本をグレゴリー・アレン・ハワードが務めた。
出演
- シンファ・エリヴォ
- レスリー・オドム・Jr
- ジョー・アルウィン
- ジャネール・モネイ
- ジェニファー・ネトルズ
- ヴァネッサ・ベル・キャロウェイ
- クラーク・ピータース
序盤のあらすじ
1849年、主人が亡くなったことをきっかけに、奴隷のハリエット・タブマンはフィラデルフィアへと逃亡することにした。
道中、ハリエットは地下鉄道の構成員たちに助けられ、彼らと親交を深めていった。フィラデルフィアに到着した後、ハリエットは地下鉄道の「車掌」として活動するようになった。
「車掌」とは奴隷たちを南部から北部・カナダまで誘導する係であった。
ハリエットは「車掌」として数百人の奴隷の逃亡を手助けした。
そんなハリエットには多額の賞金が賭けられており、腕利きのバウンティハンターたちが彼女の行方を追っていた。
しかし、ハリエット及び彼女が誘導していた奴隷たちが捕まることは1回もなかった。
引用:Wikipedia
今作は、アメリカ合衆国メリーランド州ドーチェスター郡出身の奴隷で、その後奴隷解放運動家や女性解放運動家として活動したハリエット・タブマンの人生を当時のアメリカ合衆国における奴隷たち、その奴隷たちを取り巻く環境などを描きながらハリエットの行った勇気ある活動を映像化した作品。
ハリエット・タブマンとは
ハリエット・タブマン(1820年又は1821年-1913年3月10日)はメリーランド州出身の奴隷で後に奴隷解放運動家などとして活動した女性。特に、黒人奴隷を密かに逃がした地下鉄道の女性指導者の1人として知られている。その功績から尊敬の念を込めて、「女モーセ」「黒人のモーセ」とも呼ばれていた。
2016年には、アフリカ系アメリカ人としては初となる「20ドル札」のデザインへの採用など偉人的な扱いではあるが、その人生は決して恵まれてなどおらず、長年の奴隷生活や奴隷監督からの肉体的虐待に耐えながらも、その際に受けた頭部への殴打は後遺症という形で残り生涯にわたってナルコレプシーとてんかんに悩まされていた。
そんな当時のアメリカでは何処にでもいる1人の奴隷の人生を描いているのだが、やはりこういった作品を観た時に感じるのは「人種から来る思い上がり」ほど哀れな物はないということだ。
そして哀れであると同時に、それが人にとってどれだけ残酷で理不尽なことなのかは言うまでもないだろう。
何処の国もある程度は同じような歴史を重ねてきた側面もある。
そしてそれらはさほど昔の事ではないという事も考えさせられる部分だ。
時代の流れや、周辺国の利害の一致でナチスドイツなどは破滅の一途を辿った訳だが、根本でやっていることはそのナチスドイツとほとんど変わらないというのだから救いようがない。
勿論、ナチス政権を擁護する意図は一切ないのだが、あれより程度がマシなら人をモノとして扱って良いというような道理はないだろう。
それが100年や200年という、ほんの少し前の時代には当然のようにそこにあり、人の生活の中に収まっていたのだから「人」というのは学ばない生物ということを映像からヒシヒシと感じる。
しかし、人種などという下らない括りをすることなく「人」として考え「人」として接した人々も居たというのが救いだろうか。
現代とは全く違う時代背景が存在する当時のアメリカで、非国民扱いを受けても仕方がないとも言える行動をさも当然の如く行った肌の色が少し違うだけのアメリカ人たちが居たという事を、今現在アメリカで生活する人々はどう考えるのだろうか。
勿論、アメリカだけでなく世界中で起こる万国共通の問題だということも、この映画を通して知って考えてみてほしい。
「人種」などという括りが無くなる日は来るのだろうか、途方もない願いだとは思うが来ることを強く願う。
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