『ガルヴェストン』感想・紹介・レビュー【死に場所と生きる希望】
ガルヴェストン
2018年に公開されたアメリカ合衆国のスリラーアクション映画。
監督をメラニー・ロラン、脚本をジム・ハメットが務めた。
出演
- ベン・フォスター
- エル・ファニング
- リリ・ラインハート
- アデペロ・オデュイエ
- ロバート・アラマヨ
- マリア・バルベルデ
- ボー・ブリッジス
序盤のあらすじ
1988年のニューオーリンズ。
病魔に侵され、死への恐怖から医師の診断を拒絶したヒットマン、ロイは組織のボスからとある仕事を持ちかけられる。
その仕事にて、待ち構えていたかのような襲撃者により捕らわれるが一瞬の隙を突き、彼らを返り討ちにする。
その際、衝動的にその場に囚われていた若い女性ロッキーを解放し、共に逃亡することにする。
ボスに嵌められたと考えたロイは、命からがら思い出の地ガルベストンに向かうことに。
ロイはガルベストンに潜伏しつつ、自分を狙ったボスに復讐する機会を窺う道を選んだのである。
引用:Wikipedia
今作は、ニック・ピゾラットが2010年に発表した小説『逃亡のガルヴェストン』を原作とし、裏社会で生きてきた男が命の終わりが近いことを知った後の仕事先で囚われていた女を連れ出し逃亡し、2人の果てのない逃亡劇を描いた作品。
原作者であるニック・ピゾラットが今作の脚本も務めているが、名義はジム・ハメット。
タイトルにもなっている ”ガルヴェストン” というのは実際に存在する町の名称。
巨大ハリケーンの直撃から復興した町で、晴れて穏やかであればメキシコ湾を望むことの出来るテキサス州の細長い島にある。
町の名前自体も1900年にあったハリケーンの名称から来ている。
ポスター、あらすじから哀しきヒットマンとまだ幼さの残る居場所のない女性の逃避行ということもあって『レオン』をイメージする人が多いと思う。
間違ってるわけではないのだが、今作はどちらかと言うとリアリズムを追求した作品。
人生というものはやり直すことが出来る、と主人公に語らせてはいるもののそれは奇跡に近いということを視聴者に伝えるような描き方をしている。
ストーリーだけでなく、ハリウッド映画では中々見ることの出来ない映像美も今作の大きな魅力。
要所要所で挟まれる写真、もしくは絵画かと錯覚するような印象に残る映像。
撮影方法が気になるほどに、海岸を含めた自然の風景や何処にでもありそうな何気ない建造物の外観から内観ですらも、絵画的な美しさを感じさせる。
この辺りはフランス人女優でもあるメラニー・ロラン監督の技量といった所だろうか。
本当に必要なところ以外はBGMやその他要素を徹底的に排除して、リアリズムを追求し淡々と展開していく。
それでいて映像は終始美しく、ストーリーは心に訴えかけてくる内容。
フランス映画の良いところを全部盛り込んだかのような描き方をしている。
失礼な決めつけになってしまうが、メラニー・ロラン監督はまだそこまで監督として本数を撮っているわけではない。
しかし、まるでベテランの監督を思わせるかのような高度な技術がストーリーの展開の仕方や演出、カメラワークを含めた映像から感じ取ることが出来る。
今後の作品にも注目したいと思わせてくれるほどの仕上がりだった。
決して派手ではなく淡々と進むストーリーでありながら、重厚で骨太なストーリー。
映像から感じられる絵画的な美しさと、そこはかとない切なさ。
話題の超大作のような映画ではないかもしれないが、強くオススメしたい1作。
小ネタ
脚本を務めたのは原作者であるピゾラットなのだが、名義を変えた理由は「ロラン監督が脚本を手に入れた結果、自分の思い描いた作品とは違うものになった」というものから、自分の名前が脚本家としてクレジットされるのを拒否したため。