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『ヴィクトリア女王 最期の秘密』感想・紹介・レビュー【従僕の献身】

ヴィクトリア女王 最期の秘密

ヴィクトリア女王 最期の秘密 (吹替版)



2017年に公開されたイギリス・アメリカ合衆国合同制作のドラマ映画。
監督をスティーヴン・フリアーズ、脚本をリー・ホールが務めた。

出演
  • ジュディ・デンチ
  • アリ・ファザル
  • ティム・ピゴット=スミス
  • エディー・イザード
  • アディール・アクタル
  • マイケル・ガンボン

 

序盤のあらすじ

1887年、インド女帝でもある英国のヴィクトリア女王は在位50周年を迎えていた。

些細な理由から、英領インドから女王への献上品である記念硬貨を捧げ持つ要員にアブドゥル・カリムとモハメドが選ばれ、二人は英国へ向かう。

宮殿での儀礼を終えようとした時、女王と目を合わすことも禁じられていたにも拘らず、アブドゥルは女王の足に口づけ、強い印象を残した。

女王は、39年前に治世最初の首相だったメルバーン子爵を、26年前に最愛の夫アルバート王配を、3年前に寵臣ジョン・ブラウンを、と信愛を寄せた男性たちを次々に喪い、さらに現在では長男のバーティ王太子はじめ子供たちとの関係も悪化し、宮廷の因習と孤独の中にいた。

引用:Wikipedia

 

今作は、シャラバニ・バスの『Victoria & Abdul』を原作とし、ヴィクトリア女王と女王の従僕であるアブドゥル・カリムとの交流を史実を交えながら、コミカルでライトな仕上がりのドラマ映画に仕上げている。
ただ、史実に基づいてはいるものの従僕のアブドゥルに関しては、公的な記録が現存していないのもあって細部は推測なりフィクションで描かれていると思うので、その辺りは注意。

 

似た感想を持った人も居るとは思うのだが、私はこの作品の映画化の経緯自体に結構驚いた。
女王の晩年にインド人でイスラム教徒の従僕が女王の友人となり、王子を始めとし王宮内の使用人たちにすら差別を受けながらも友情を全うしたアブドゥル。
女王の死後に王子(王位を継承した王)がアブドゥルのあらゆる記録を全部焼却したが、2010年にアブドゥルの日記が発見され、その事実を認め2017年に映画化。

 

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「それの何が驚くことなの?」と感じる人も居るとは思うが、時代が時代であればそもそも日記を発見したとしてもそんなものは発表するまでもなく、記録を焼却したのと同じで処分されていただろう。
それを公表し認め映像化するまで至ったことを考えると、権威や伝統に対して様々な考え方を持つ人が増えた証拠なんだろうなぁと個人的には思った。
勿論、事実そのままを描いているわけではないのは百も承知ではあるのだが、それらを語ること自体に驚いた。

 

今回主演のジュディ・デンチは1997年の作品『Queen Victoria 至上の恋』で同じくヴィクトリア女王を演じているのもあり、慣れているという表現が良いかは分からないがその経験が存分に発揮されていると感じた。
愛する人に先立たれ長きにわたり感じていた孤独、年齢や立場に拘りなく常に学ぼうとする意識、保守的になるのではなく新しい物との出会いを素直に受け入れる姿勢などが表情や台詞から感じ取ることの出来る素晴らしい演技。

 

アブドゥル・カリムを演じたアリ・ファザルも素晴らしく、公的な記録があるわけではない実際に居た人物という難しい役柄ながら、しっかりとリアリティを感じさせてくれる安定した演技力と表現力で演じきっている。

 

ストーリー的には恐らく良い話として作っているし、観る側もそういう話として観る事の方が多いとは思うのだが、自分がひねくれているのかリアリストな部分があるのか異なった観方も出来てしまう。
インド人でもヒンドゥー教徒ではなく、イスラム教徒であるアブドゥルは最下層であったためにそこから抜け出す活路をイギリスに見出そうとする。
そうなれば当然ヴィクトリア女王への献身は友情と捉えられなくもないかもしれないが、そうでない要素も含まれているだろう。

 

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現代でも欧米全体に言えることだが、当時のイギリスのインド人への差別は至極当然の様に行われていて、女王がアブドゥルを寵愛すればするほどその風当たりは強くなっただろう。
だからこそ女王の死後、関連する資料などが全て焼却されたのだと考えると美談に見えて残酷な話のような気もする。

 

そういった部分も含め、当時の社会情勢を考えると若干ロマンティックに仕上がり過ぎているような気もしなくはないが、建造物や風景含むセットに衣装はとても美しく、俳優陣の演技も素晴らしいので観る価値は充分あると思える作品だった。

 

 

 

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