『バハールの涙』感想・紹介・レビュー【太陽の女たち】
バハールの涙
2018年に公開されたフランスのドラマ映画。
監督・脚本をエヴァ・ユッソン、共同脚本をジャック・アコティが務めた。
出演
- ゴルシフテ・ファラハニ
- エマニュエル・ベルコ
- ズベイダ・ブルト
- マイア・シャモエヴィ
- エヴィン・アーマドグリ
- ニア・ミリアナシュヴィリ
- エロール・アフシン
邦題は『バハールの涙』だが、原題は『Les Filles du Soleil』で意味は「太陽の女たち」で主人公バハールが結成した女性だけの戦闘部隊の名称と同名。
2014年にISがイラク北西部のシンジャル山岳地帯に住む少数民族ヤズディ教徒を襲撃した事件から着想を得て、ISに奪われた息子を助け出すために女性だけの戦闘部隊を結成し、その戦いの最前線へと身を投じたクルド人女性であるバハールと彼女たちを取材する女性ジャーナリストのマチルドの姿を描いた作品。
今この時も記事を書いているときも映画を観ているとき、食事をしているとき、睡眠をとっているとき、世界中で多くの人々が理由にならない理由によって虐げられて、今作の様に理不尽に一瞬にしてこの世から存在を消される。
日本という国に住んでいたら実感など出来ないであろうが、虐殺や誘拐に人身売買などといった犯罪が日常茶飯事に起こっている。
そしてそういった出来事はほとんどニュースにはならない。
ニュースになるのは極一部も一部、そしてなったとしてもそれを見た人は一瞬にして忘れてしまい、明るいニュースだけを記憶し暗いニュースは見ないふりをする。
作中で似たようなセリフがあるのだが、正にその通りであると改めて痛感する。
いま世界中で新型コロナウイルスに関係するニュースがこれでもかと報道されているが、そんなのは先進国だけで、今は生きているが来週、明日、数時間後、数分後に自分が生きているのか分からないまま様々な状況と必死に戦っている人々が居るという事。
序盤のあらすじ
クルド人の女性で弁護士のバハールは、イラクのクルド人自治区内にある故郷の町で夫と息子と共に幸せに暮らしていたが、ある日、町がIS(イスラミックステート)の襲撃を受け、夫を始め男性が皆殺しにされ、息子を戦闘要員として育成するために連れ去られ、自身もISの幹部に性奴隷として売り飛ばされてしまう。
やがて命からがら逃げ出したバハールは息子を必ず取り戻すことを決意、同じ被害に遭った女性を集めて女性だけの戦闘部隊「太陽の女たち」を結成、ISとの闘いに身を投じていく。
引用:Wikipedia
観進めていくと、実在の事件がモチーフとなっているということが信じられないほどの苦しさを感じ、せめて作り話であってくれと思いたくなる。
それほどに今作は当人たちのありのままの実情を伝えることに成功している。
作中でクルド人女性たちが歌うシーンがあるのだが、歌だけでなくそのシーンが本当に心に刺さる。
「女性」というだけで不当に理不尽に踏みにじられてきた人々が、その「女性」であることを誇りにして「女性」だけで戦うことの切なさ、美しさ。
安易な感情による涙などではなく、様々な感情が複雑に絡み合って気付けば頬を伝っている。
映画的な見方をすればハリウッド的にはっきりとしたラストを求める人も居るだろう。
しかし今作はそうじゃないからこそ素晴らしいということを分かってほしい。
こういった悲惨などという言葉では表現しきれない出来事は、悲しいことに恐らく無くなることは無いのだろう。
それをまざまざと感じさせてくれるこれ以上ないラストだった。
傍観者というのは楽だと思う人が多いだろう。
だが本当にそうだろうか?
傍観者であり続けるのは居心地のいいことではない。
小ネタ
女性ジャーナリストマチルダはメリー・コルヴィンとアーネスト・ヘミングウェイの3番目の妻で従軍記者であったマーサ・ゲルホーンをモデルとして描いている。
↓↓Prime Video無料体験はこちら↓↓