洋画な日常

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『真珠の耳飾りの少女』感想・紹介・レビュー【光と影、動と静】

真珠の耳飾りの少女

真珠の耳飾りの少女 (字幕版)

 

2003年に公開されたイギリス・ルクセンブルクのドラマ映画。
監督をピーター・ウェーバー、脚本をオリヴィア・ヘトリードが務めた。

出演
  • スカーレット・ヨハンソン
  • コリン・ファース
  • トム・ウィルキンソン
  • キリアン・マーフィー
  • エッシー・デイヴィス

 

今作は、ヨハネス・フェルメールを代表する絵画の1つ「真珠の耳飾りの少女」から着想を得て、トレイシー・シュヴァリエによって書き上げられた同名小説を映画化した作品。

 

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer) は、ネーデルラント連邦共和国(オランダ)を代表する画家の1人で、バロック期を代表する画家の1人でもある。
映像のような写実的な手法と綿密な空間構成、そして何より光による巧みな質感表現を特徴とするのもあり「光の魔術師」とも呼ばれる。
本名ヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト (Jan van der Meer van Delft)。

 

終始、フェルメール作品でよく見ることの出来る特徴的な色彩や構図を映像の中で上手く表現しているのもあって、絵画の世界をそのまま切り取って繋いで映像にしているとすら思えるほどの映像美に目を奪われるとともに酔いしれることが出来る。

 

絵画で描かれている少女をスカーレット・ヨハンソンが演じているのだが、当時10代というのもあってその初々しさと謎めいた美しさが存分に表現されている。
「真珠の耳飾りの少女」に描かれた少女の正体は不明で、これから先も解明されることは無いのだろうと思うが、今作を観る事で誰しもがその正体を考え想像を掻き立てられる。

 

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この絵画だけでなく、有名な絵画は色々な謎があったり情報が不足している場合が多い。
意図的にそうしたのかは分からないが、映画での表現方法も決して多くを語らずにその映像や俳優陣の表情、雰囲気で魅せてくる。
この登場人物の行動や言動、様々なシーンの意味を説明しないことで謎多き作品を表現している。

 

序盤のあらすじ

1665年のオランダ、デルフトの街。

タイル絵師の父を持つグリートは、画家のフェルメールの家に下働きとして入る。

フェルメール夫人に、アトリエの掃除を命じられ、「窓を拭いてよろしいですか? 光が変わりますが?」と問う。

芸術を理解しない夫人との対比がされている。

グリートは陰影、色彩、構図に隠れた天分を持っていた。才能を見出したフェルメールはグリートに遠近法や絵の具の調合を教える。

絵の構図が悪いと考えたグリートは、アトリエでモデルとなった椅子を除けて、陰影を強調する。

フェルメールはこれを見て、描いていた椅子を消し、光と影を付け加える。

引用:Wikipedia

 

映画という作品の中で、フェルメールの表現した世界が復元されているかのような感覚に陥る。


街の風景

その街を照らす光

室内へ差し込む淡い光

水差しから流れ出る水

テーブルに置かれた食材


その全てが映画として成立しながらも全てのシーンが1枚の絵画として成立している。


”光の魔術師”と言われたフェルメールを再現するかの如く、自然光で撮影されたかのような映像で差し込む光と相対する影の表現や色の質感から構図に至るまで徹底されていて圧巻の一言。

 

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俳優として人間として円熟期にあったコリン・ファースとまだ初々しさの残るスカーレット・ヨハンソンの静の演技が光っている。
この2人の寡黙な演技とそれに寄りそう音楽、絵画と見間違うほどの映像美が作品にセンシュアルな印象を与えてくれる。

 

個人的には今作は物凄くフェルメールの世界観を再現できていると思っている。
しかし映画の感想としてたまに見るのだが”少女”をスカーレット・ヨハンソンが演じていることについて、忠実に再現するのであればもっと幼い少女じゃないといけないのでは?というもの。

知らない人が多いのかもしれないが、絵画で描かれている少女が「誰か」というのは様々な説がある。
娘のマーリア、妻、恋人、もしくはフェルメール自身の完全なる創作というような説もあるのだが、フェルメールの家族や知人の肖像画も無い上に伝記といったものも残っていないのもあって真相は不明なので、今作はその1つの「説」として考えれば違和感もないと思う。

 

1つ注意して欲しい点としては、この作品は基本的に”動”ではなく”静”を終始一貫している。
そのために、淡々と世界観や雰囲気重視で展開されていくような物が苦手な人には分かりづらいと感じてしまうと思うので、全くといっていいほど向かない。

 

逆にこういった雰囲気、世界観、空気感重視の落ち着いた作品が好みの人や、そういう作風を求めている気分の時などには是非オススメしたい素晴らしい作品だ。

 

 

 

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