洋画な日常

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『ウインド・リバー』感想・紹介・レビュー【大国が抱える闇】

ウインド・リバー

ウインド・リバー(字幕版)

 

2017年にアメリカ合衆国で公開されたサスペンス映画
監督・脚本はテイラー・シェリダンが務め、テイラーの監督デビュー作。

出演
  • ジェレミー・レナー
  • エリザベス・オルセン
  • グラハム・グリーン
  • ケルシー・アスビル
  • ギル・バーミンガム

 

この作品、冒頭で「事実に基づく」とテロップが出ているせいで勘違いする人も居るが、作中で起こる事件自体が実話な訳ではない。
では何が「事実に基づく」なのか。

 

それは現代でもアメリカで根強く残る「ネイティブアメリカンの現状とその女性の被害」について描いた作品なのだ。
作中でも出てくるが、ウインド・リバーに常駐している警察官の数は6人

 

これだけを聞くとそもそもこの地域が狭いんじゃないか?と思ってしまうのは自然だろう。
だがそんなことはなく、分かりやすく日本の都道府県で例えれば日本で面積10番目の鹿児島(9,187㎢)とほぼ同等(9,147㎢)の大きさに「たった6人」しか居ない。

 

これだけでも異質な事が分かるが、もっと言ってしまえばそのたった6人もある意味では居ても居なくてもあまり変わらないかもしれない。

鹿児島県と同等の広さの土地を6人で管理するなど無理な話で、目が行き届く訳が無い。
そうなれば当然の様に治安は悪化していく。


ただ実際は「アメリカ合衆国」という国が出来た当時まで遡るような話になってしまうので、詳しく知りたい方は ”ウインド・リバー・インディアン居留地” で検索してみてほしい。


『ウインド・リバー』はこういった実際にあるアメリカ合衆国という大国が抱える現代の闇を描いた作品である。

 

序盤のあらすじ

ワイオミング州ウインド・リバー・インディアン居留地

FWS(合衆国魚類野生生物局)のハンター、コリーは雪山に囲まれた雪原の中で、ネイティブアメリカンの少女ナタリーの死体を発見した。

BIA(インディアン部族警察)署長のベンは、FBIに捜査を依頼するが、派遣されたのは新人捜査官のジェーン1人だった。
ジェーンは過酷な環境での捜査に難渋し、コリーに捜査への協力を依頼した。

検死を行うと裂傷やレイプ痕があり、殺人の可能性が高いが、死因は冷気を吸ったことによる、肺の出血と窒息死であり他殺とは断定されなかった。

捜査を進めて行くと、ナタリーが極寒の中を10キロもの距離を裸足で逃げていたことが分かったのだった。

引用:Wikipedia

 

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序盤でアメリカ合衆国国旗が映るシーンがあり気付く人も居たと思うが、実は逆さになっている。
あれは荒廃した土地に追いやられた一族の敵意を表現しているのだろう。

 

敵意を持つのも仕方ないと言えば仕方なく、舞台となっている「ウインド・リバー」だけでなく100か所近い保留地があり、先住民たちはそこに追いやられるような形で生活している。
そしてその保留地は農業には全く向かない荒れ果てた土地であることがほとんどで、農耕は不可能、産業も育たない。

 

映画の舞台が広大で一面の雪原なのもあり、基本的に背景は白く広がっている。
他の映画ならその真っ白な風景は美しく映るのだろうが、この作品だとその白さは物悲しくもあり、恐怖すら感じる。
この辺りは『ボーダーライン』制作にも関わったテイラーが流石といった感じだろうか。

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カテゴライズは「サスペンス」となっているにしては、その要素はそこまで多くないのでそこは注意かもしれない。
あくまでもメインのテーマは「ネイティブアメリカン」であって、そこに謎解き要素が乗っかっている。

 

ただ、個人的には「サスペンス」「人間ドラマ」「ネイティブアメリカン」この3つの要素が上手く絡み合い、上質で重厚な映像作品に仕上がっていると感じた。

 

映画自体のネタバレではないので触れるが、映画の最後であるテロップが流れる。

「ネイティブアメリカン女性の失踪者に関する、統計調査は存在しない。失踪者の数は不明のままである」

このテロップだけでもこの問題の根深さが十分分かってもらえると思う。

 

あの「逆さまの星条旗」が本来の向きで掲げられる日は来るのだろうか・・・

 

 

 

 

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