『第9地区』感想・紹介・レビュー【人間かエイリアンか】
第9地区
2009年に公開されたSF映画。
地球に難民としてやってきたエイリアンと、それを抑圧する人類との対立をドキュメンタリー風に描いた作品。
舞台となった南アフリカ共和国でかつて行われていたアパルトヘイト政策が反映されたストーリーになっている。
アパルトヘイトとは
アフリカーンス語で隔離や分離を意味する言葉で、特に南アフリカ共和国で白人と非白人の諸関係を規定する人種隔離政策。
出演
- シャールト・コプリー
- デヴィッド・ジェームズ
- ジェイソン・コープ
- ヴァネッサ・ハイウッド
- ジョン・ヴァン・スクール
この作品はニール・ブロムカンプ監督の長編映画デビュー作品で自身の短編映画『Alive in Joburg』の長編化。
冒頭で述べた通り、アパルトヘイト時代のケープタウン第6地区からの強制移住政策が題材にはなっているが、政治的な映画というよりは「人種対立」の中に「新たな弱者」が入ってくるという新しい試みをしたエンターテインメントという感じ。
実際作中では、存在自体がある程度の危険性を持ってはいるがエイリアンの描き方はユーモラスだし、派手なアクションシーンがあったりと娯楽性が高い。
単純な社会風刺映画ではなく、
「風刺」「コメディ」「アクション」
「サスペンス」「親子」「悲劇」
と様々な要素がバランスよく盛り込まれた作品になっている。
要素を多く盛り込んでしまうと、どこかで破綻してしまったりすることが多いが、この作品はそういったことは一切なく進み、無駄も少なく見応えがあるが見易く作られていて監督の才能が見て取れる。
序盤のあらすじ
1982年、南アフリカ共和国のヨハネスブルク上空に突如宇宙船が出現した。
しかし、上空で静止した巨大な宇宙船からは応答や乗員が降りる様子はなく、人類は宇宙船に乗船しての調査を行うことを決定。
知的生命体との接触に世界中の期待が集まる中行われた調査であったが、船内に侵入した調査隊が発見したのは、支配層の死亡と宇宙船の故障により難民となった大量のエイリアンであった。
乗船していたエイリアンたちは地上に移され、隔離地区である「第9地区」で超国家機関MNUによる管理・監視を受けながら生活することになったが、文化や外見の違いから人間とエイリアン達との間では小競り合いが頻発する。
人間達のエイリアンへの反発や差別は強まり、やがて彼らの外見から「エビ」という蔑称が定着するようになった。
引用:Wikipedia
こういった作品の場合「人間」か「エイリアン」のどちらかの側に偏ってしまう事が多いが、しっかりと両側の厭らしさや醜さ、汚さ、愚かさを描きつつも根幹にあるのは「愛情」とどちらの言い分、考え方も共感することが出来るように作られていて観ていて非常に悩ましい。
現代でも様々な国や地域で問題となっている、移民問題や移民政策等を語る中で必ずと言っていいほど陥る「固定観念」の恐ろしさ、それによって遅れる判断。
このあたりの風刺的要素も、くどさを感じさせることなく作中に上手く入れ込んでいてすんなりと入ってきた。
この映画を見ると、「人間」か「エイリアン」どちらかの側に立った感想や感情を持つことになると思う。
そしてその逆側の立場に立ってもう1度観るとまた違った面白さがある良作。
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