『マンデラの名もなき看守』感想・紹介・レビュー【1人の看守と1人の囚人】
マンデラの名もなき看守
2007年のドイツを始めとする7か国で制作されたドラマ映画。
南アフリカ政府の刑務官であったジェイムズ・グレゴリーの手記『さようなら、バファナ』(Goodbye Bafana)が原作で、ビレ・アウグスト監督によって映画化された。
バファナとは主人公グレゴリーの幼なじみであった近所のコサ人の子どもの名前。
出演
- ジョセフ・ファインズ
- ダイアン・クルーガー
- デニス・ヘイスバート
- パトリック・リスター
- フェイス・ンドクワナ
この作品は、南アフリカ共和国での「アパルトヘイト」という政策があった時代を舞台にしている。
アパルトヘイトとは
アフリカーンス語で「分離、隔離」という意味の単語で特に南アフリカ共和国における白人と非白人の諸関係を規定する人種隔離政策のことで、1948年に施行されてから推進されていたが1994年に全人種による初の総選挙が行われた結果撤廃となった。
実は少年時代に黒人の友人が居て言葉が分かるという、その当時では黒人の惨状を理解出来る数少ない白人だったのもあり、政府からまるでスパイのような扱いを受けていた刑務官が徐々にマンデラと信頼関係を築いていく様子が丁寧に描かれている。
序盤のあらすじ
ジェームズ・グレゴリーは南アフリカの刑務官だった。
コサ語を理解できるということで、終身刑を受けたネルソン・マンデラを監視するという任務に就き、1968年に刑務所のあるロベン島に赴任することとなる。
妻グロリアは夫の昇進が近いということで、大感激であった。
最初、マンデラを死刑にすることが当然と考えていたグレゴリーは、独房で実際にマンデラと出会い、その威厳ある態度に接することにより徐々に考え方を変え始める。
マンデラの息子の死に、グレゴリー自らコサ語でお悔やみを言って、お互いに友好的な会話が成り立つ。
マンデラは、アフリカ民族会議の『自由憲章』(The Freedom Charter)の意義を、正々堂々、グレゴリーに説く。
引用:Wikipedia
刑務官を演じたジョセフ・ファインズの演技も良かったが、マンデラを演じたデニス・ヘイスバートが素晴らしかった。
知識と教養が豊富で尚且つ周囲の人を全て包み込めるような包容力と、自らの意志がしっかりとした卓越した指導力の持ち主を見事に表現していた。
ただ、そういった演技の素晴らしさがあるが故に現在の南アフリカ共和国の現状を見ると残念でならない。
作中でも実際にもマンデラは、支配や復讐ではなく差別の撤廃、共生を求めていた。
しかし、現実の南アフリカではどうしても、黒人の方が人数が多い時点で白人に対して厳しいマニフェストを掲げる候補の方が選挙で有利になる。
そうなれば自然とそっちに寄った候補者が出るのはある意味では自然。
そしてそういう候補者が選挙に勝てば勝つほど、どんどんバランスが崩れていく。
こういった流れを防ぐための憲法レベルでの措置を取っていればまた違ったのかもしれない。
マンデラが大統領であった当時に、理想論だけではなくそれを実現することが出来ていればと思うだけに、この映画は持ち上げるだけなのがちょっと残念でもあった。
その辺りが気にはなるが、その当時の一部を切り取った映画としては演技や表現含めて素晴らしい作品。
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