『マイアミ・バイス』感想・紹介・レビュー【人気TVシリーズの映画化】
マイアミ・バイス
2006年に公開されたアメリカ合衆国のアクション映画。
監督・脚本・制作をマイケル・マンが務めた。
出演
- コリン・ファレル
- ジェイミー・フォックス
- コン・リー
- ナオミ・ハリス
- エリザベス・ロドリゲス
- ドメニク・ランバルドッツィ
序盤のあらすじ
マイアミデイド警察特捜課(バイス)に所属しているソニー・クロケットとリカルド・タブスの2人が使っている情報屋アロンゾの家族が殺され、アロンゾ自身も自殺するという事件が発生。
それと同時に、FBIの潜入捜査官3名が潜入捜査中に殺害される。
合衆国司法機関の合同捜査の情報が漏洩している可能性があると判断したFBIのフジマは、未だ麻薬組織に面が割れていないクロケットとタブスに、麻薬の売人であるホセ・イエロと接触するよう要請する。
クロケットたちは運び屋のアジトを襲撃してボートを破壊し、新しい運び屋として自分たちをホセ・イエロに紹介するよう情報屋ニコラスに脅しをかける。
引用:Wikipedia
今作は、1984年から1989年にかけてアメリカで放送されていたテレビシリーズ『特捜刑事マイアミ・バイス』を劇場用の映画としてリメイクした作品。
テレビシリーズ時に、脚本や製作総指揮を務めていたのもありマイケル・マンが監督として起用された。
映画のストーリー構成はシーズン1の15話である「運び屋のブルース」をベースとして描いている。
ストーリー展開や映画としての出来は正直至って無難な作品という印象。
勿論、決してつまらないという訳でもなく取り立てて酷い部分があるわけでもないのだが、観ている側の想像を越えてくるような展開も一切ない。
言ってしまえば「良く見る展開」な訳だが、それ自体はそこまで問題ではないだろう。
展開や話の構成が典型的な作品なんて、それこそ腐るほどある。
この作品の問題は、その典型的な良く見る話なだけで終わらせてしまった所。
バランスを取ろうとしているせいなのかアクション全開な映画と比較すると物足りないし、主役の2人に関しては魅力があるのだが他のキャラクターに魅力が感じられない。
序盤の印象が安っぽいよくあるアクションラブロマンスで、何処で裏切ってくれるのだろうと期待していると痛い目にあう作品になってしまっている。
ただ、テレビシリーズとは雰囲気や演出方法が異なってはいるものの、綺麗さと怖さを含む夜のシーンや臨場感のある描写など、マイケル・マンらしさはきちんと出ている。
ラストの展開はかなり賛否が分かれるとは思うが、これもらしいと言えばらしい。
それにマイケル・マンが続投したことによって作風はTVシリーズを踏襲しているのもあって、TVシリーズファンは十分楽しめる内容にはなっている。
そして恐らく、あのラストの展開や解明されていない謎は続編を作りたかったからあのような内容になっているのではないだろうか。
様々な部分でツッコミどころが多い作品ではあるが、映画としてはそれなりに楽しむことが出来る仕上がりにはなっている。
細かい事を気にせずに気軽に手軽に映画を観たいという人にとっては何ら問題なく観ることが出来るのではないだろうか。
小ネタ
今作の撮影中、ハリケーン・カトリーナの影響でセットに被害が出てしまい、当初の予定よりも制作費が膨れ上がり結果として2億ドルかかってしまった。
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『ネイビーシールズ』感想・紹介・レビュー【対テロ戦闘ドキュメンタリー】
ネイビーシールズ
2012年に公開されたアメリカ合衆国の戦争映画。
監督をスコット・ウォー、マイク・マッコイ、脚本をカート・ジョンスタッドが務めた。
出演
- ローク・デンヴァー
- ロゼリン・サンチェス
- ネスター・セラーノ
- ジェイソン・コットル
- アレックス・ヴィードフ
序盤のあらすじ
NavySEALs"チーム7"のローク大尉は、休暇中に副官のデイブと家族ぐるみで交流し、絆を深めていた。
そんな中、コスタリカで麻薬カルテルに監禁された、CIA女性エージェント、モラレスの救出指令が下る。
ジャングルで救出したモラレスからの情報により、麻薬カルテルとイスラム系テロリストの関与が浮上する。
麻薬カルテルの大物ディーラー、クリストを逮捕するため、SEALsは海上でクリストの豪華クルーザーを急襲する。
引用:Wikipedia
今作は、アメリカ海軍特殊部隊Navy SEALsの活動を描いた作品。
現役の隊員が出演しているだけでなく、作品内に登場する武器や兵器は本物を使用、更には実弾を用いて撮影が行われた。
原題は『Act of Valor(勇気ある行為)』。
この作品を観る際に知っておいて欲しいことがいくつかある。
内容としてはネイビーシールズの戦闘、作戦のシーンだけを追った異質でありながら極めて単純な映画になっている。
映画的なストーリーの展開が有るわけでもなく、演出があるわけでもなく最早ドキュメンタリー映画と言ってもいいくらいだ。
現役兵士が出演しているのもあってシーンにリアリティは出ているものの、演技のプロではないので演技に圧倒されるということもない。
となると今作の魅力は何なのか。
それは原題『勇気ある行為』を思い出すと納得できるのではないだろうか。
自らの命を懸けてアメリカという国家、家族を含めた周囲の人々を驚異から護る隊員たちに”映画的な”演出やストーリーは野暮というものだろう。
そして、映像の視点が基本的には人間が見ている視線と同じようになっているので、リアリティは勿論のこと戦場の迫力というのを肌で感じられる。
ただ、合わない人はとことん合わない作品なのも確かではある。
上記のような内容なのもあって、映画的な見せ場や山場があるような作品ではない。
それにあくまでも「アメリカ」という国の視点から見たテロだったり戦争なので、アメリカ万歳的な内容が嫌な人も居るだろう。
そもそもアメリカ自身も自ら戦争を起こしていることを踏まえたうえで、テロの定義を1度考えてみると様々思う事がある。
勿論、今作が伝えたいことはそういったことではない。
俳優による演技や映画的な演出を排し、日々過酷な任務の中でネイビーシールズ隊員たちが何を思い、考え、自らの命をささげているのか。
戦死したり任務中の死で後世まで名が残る人など皆無。
そんな名もなき英雄たちの尊い犠牲の上に、今の平穏な生活が成り立っているという事を伝えようとしている。
映画作品としての演出や脚本があるわけでもないし、キャストが個性を出している訳でも複雑な人間ドラマが描かれているわけでもないという、言ってしまえばかなり異質な作品である。
しかし、だからこそ今作からはテロや国家、隊員を含めた国民について様々なことを訴えかけてくる媒体として成立している。
かなり好き嫌いは分かれるかもしれない、だが1度観てから判断してみてほしい。
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『アトミック・ブロンド』感想・紹介・レビュー【美しく強く舞う】
アトミック・ブロンド
2017年に公開されたアメリカ合衆国のサスペンスアクション映画。
監督をデヴィッド・リーチ、脚本をカート・ジョンスタッドが務めた。
出演
- シャーリーズ・セロン
- ジェームズ・マカヴォイ
- ジョン・グッドマン
- ティル・シュヴァイガー
- エディ・マーサン
- ソフィア・ブテラ
- トビー・ジョーンズ
序盤のあらすじ
1989年、東西冷戦末期のベルリン。
世界情勢に多大な影響を及ぼす極秘情報が記載されたリストが奪われた。
イギリス秘密情報部MI6は自凄腕の女性エージェント、ローレン・ブロートンにリスト奪還を命じる。
ベルリンに潜入中のエージェント、デヴィッド・パーシヴァルとタッグを組み任務を遂行するロレーン。
彼女には、リスト紛失に関与したMI6内の二重スパイ”サッチェル”を見つけ出すという、もう1つのミッションがあった。
リストを狙い、ベルリンに集結する世界各国のスパイ。
誰が味方で誰が敵なのかわからなくなる状況下、ロレーンと世界の運命は?
引用:2017 COLDEST CITY,LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
今作は、アンソニー・ジョンストンが2012年に発表したグラフィックノベル『The Coldest City』を原作とし、1989年というベルリンの壁が崩壊する直前のベルリンを舞台に、MI6、KGB、DGSE、MfS、CIAなどの東西各国のスパイが1つのリストを巡って争うサスペンスアクションとなっている。
カースタントを始めとしてガンアクションや格闘も派手に仕上げられていて、それをシャーリーズ・セロンが難なくこなす姿を観る映画としても楽しめるかもしれない。
撮影当時40歳を越えているとは到底思えないシャーリーズ・セロンの魅力。
カメラワークによるところも勿論あるとは思うのだが、『M:i』シリーズばりに派手なアクションの連続でスタイリッシュ。
そして、ライティングや色彩なども細かく考えられているようで「ただのスパイアクション」なだけになっていないのも素晴らしい。
作中で使用されているBGMも昔懐かしいヒット曲だらけで、尚且つシーンにピッタリ。
人によるかもしれないが、時折入るフェティッシュなカメラワークも作品の魅力の1つだろう。
作中でやたらと喫煙、飲酒、性的なシーンが出てくるので、苦手な人にとっては厳しいかもしれないが、これもしっかりと理由があるということは知っていて欲しい。
実はそもそも、MI6という組織はエージェントを採用するときの基準というわけではないかもしれないが、同性愛者やアルコール依存、ニコチン依存者を好んで雇っていた。
何故ならば、そういった種類の人間はあまり長生きしそうにないと考えられていて、ということは国家の機密を扱うのに丁度いいとされたため。
そういった時代背景や細かな設定もきちんと演出されているスパイアクションはそこまで多くないので貴重だと感じている。
それに加えこのカテゴリーで、有ると無いとでは全く話が変わってくるものがある。
それは「どうにかしてくれるであろう凄み」だ。
シャーリーズ・セロン演じたローレンはこの凄みを兼ね備えている。
- 格好良さ
- 存在感
- 安心感
- 冷静さ
- タフ
これらをアクションシーンは勿論の事、様々なシーンで感じさせてくれる。
それでいてサスペンス的な要素もしっかりと盛り込まれている。
それなりにこういった映画を観慣れている人であれば問題ないと思うが、そうでない人はある程度考えないといけない程度には複雑さがあり見応えは文句なし。
そして時代背景を含めた設定もリアルで飽きさせない。
言わずもがなツッコミどころがない訳ではないのだが、映画という1つの作品としての面白さに見応えは充分兼ね備えているので同カテゴリー作品が好きな人であれば、それなりに楽しむことが出来るのではないだろうか。
小ネタ
シャーリーズ・セロンは今作の撮影のために8人のトレーナーとトレーニングを重ねた。
偶然にも『ジョン・ウィック2』出演の為にトレーニングしていたキアヌ・リーヴスと、トレーニング期間が重なったため、2人はお互いに切磋琢磨するようにトレーニングに励んだ。
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『ブラック・スキャンダル』感想・紹介・レビュー【共存共栄?】
ブラック・スキャンダル
2015年に公開されたアメリカ合衆国の犯罪映画。
監督をスコット・クーパー、脚本をジェズ・バターワース、マーク・マルークが務めた。
出演
- ジョニー・デップ
- ジョエル・エドガートン
- ベネディクト・カンバーバッチ
- ロリー・コクレーン
- ケヴィン・ベーコン
- ジェシー・プレモンス
- ピーター・サスガード
序盤のあらすじ
1975年、サウスボストンでアメリカの正義の根幹を揺るがす史上最悪の汚職事件が起きた。
マフィア浄化に取り組むFBI捜査官のコノリーは、イタリア系マフィアと抗争を繰り広げるギャングのボス、バルジャーに敵の情報を売るよう話を持ちかける。
FBIと密約を交わし、情報屋の立場を悪用して敵対する組織を壊滅に追いやるバルジャー。
出世欲の強いコノリーと名声を望む政治家のビリーもまた、彼と手を組み権力の座を駆け上がっていく...。
引用:2015 Warner Bros.Entertainment Inc.
今作は、ディック・レイアとジェラード・オニールが2001年に出版したノンフィクション『Black Mass: The True Story of an Unholy Alliance Between the FBI and the Irish Mob』を原作とし、1999年にFBI10大最重要指名手配に選定されたジェームズ・ジョセフ・バルジャーと、その周囲で巻き起こった汚職事件を描いた作品。
ジェームズ・ジョセフ・バルジャーとは
1929年9月3日-2018年10月30日 1970年代から1990年代にかけてアメリカ合衆国ボストンで暗躍していた裏社会組織のボスで、元マサチューセッツ州上院議長の兄。2006年に公開された『ディパーテッド』でジャック・ニコルソンが演じた人物もバルジャーをモデルに作られた。
上記にある通り実際にあった汚職事件、実在した人物を俳優陣が見事に演じきっている。
良くキャラクターが強すぎて名演はしているものの・・・、というような声が多いジョニー・デップだが、今作はジェームズ・バルジャー本人の映像を見るだけでなく犯罪者としてのバルジャー、プライベート時のバルジャーの双方という細部まで徹底的に再現したいがために、バルジャー本人に会おうとまでした。(バルジャー本人に断られた為実現せず)
その甲斐あってまさにはまり役と言っても全く違和感のない仕上がりだった。
本人を実際知っている日本人というのは多くないと思うが、調べたりしてある程度知識がある人ならば同一人物かと錯覚させられるほどだろう。
どうしても本人の個性が強いせいかキャラが立ち過ぎてしまい、演技を真正面から評価されづらい俳優の1人だと思うのだが、今作は流石と言わざるを得ない。
そして他の俳優陣も素晴らしいのだが、特にジェシー・プレモンスが良いのなんの。
出演時間としては多くない役柄でありつつも、相変わらず巧い表現力で感情移入のしにくい作品の中でしっかりと視聴者をバルジャーのすぐ傍に居させてくれる役割を担っていた。
マフィアを扱う作品の場合どうしても『ゴッドファーザー』シリーズなどと比べられてしまって、損をすることが多い。
確かに作品的な魅力などは『ゴッドファーザー』に軍配が上がるかもしれないが、だからと言って今作が出来の悪い映画ということは一切ない。
そもそも、今作の場合はマフィアがテーマとしながらも実在の人物を描いていることやFBIが絡んできたりと異なる要素が多いので、比較対照になるのかは怪しいが。
ただ、実在の人物を演じる難しさというのは相変わらずだなと感じる。
俳優陣の演技は素晴らしい物があるのだが、バルジャーはもっといかつい親父顔をしていて正直ジョニー・デップが見た目的な意味で合っているか?と言われると首をかしげる。
どうしても見た目的にいつも通りのジョニー・デップなのもあって、今作での彼の演技というか彼自身の評価が高くないのだろう。
とはいえ作品としては俳優陣の演技力、話の構成力、展開、こんな話が実際にあったのかという驚きは充分なレベルで仕上げられているので、観て損することは無い。
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『ゴッド・ファーザー』感想・紹介・レビュー【変貌していく青年】
ゴッド・ファーザー
1972年に公開されたアメリカ合衆国のドラマ映画。
監督・脚本をフランシス・フォード・コッポラ、共同脚本をマリオ・プーゾが務めた。
出演
- マーロン・ブランド
- アル・パチーノ
- ジェームズ・カーン
- ジョン・カザール
- ダイアン・キートン
- ロバート・デュヴァル
- リチャード・カステラーノ
序盤のあらすじ
第二次世界大戦終戦直後の1945年。
ニューヨーク五大ファミリーの一角で、最大の勢力を誇るイタリア系マフィア「コルレオーネ・ファミリー」の邸宅では、ドン・コルレオーネ(ヴィトー)の娘コニーの結婚式が盛大に開かれていた。
ドンには他に3人の息子と1人の事実上の養子がおり、その中で末弟であるマイケルはただ一人裏社会には入らずに大学を経て軍隊に入り、戦場での活躍で英雄扱いを受けていた。
式に参列したマイケルは婚約者のケイを家族に紹介し、祝福される。
その華やかな雰囲気の一方で、ヴィトーは娘をレイプされた葬儀屋の男の請願を執務室にて受け、困惑しながらもその報復を部下に指示する。
また、自らが代父となった歌手のジョニーからも懇願を受け、弱気なジョニーを叱咤激励しつつ、事実上の養子であり組織の弁護士かつ顧問(コンシリエーレ)であるトムを介して、ジョニーを干そうとしていたプロデューサーのウォルツを脅し、彼が大事に育てていた雄馬の首を切り取り、彼のベッドへと放り込ませる。
引用:Wikipedia
今作は、第二次世界大戦終戦後のアメリカを舞台に絶大な権力を握るシチリア島出身のファミリーであるコルレオーネ・ファミリーが手を染める犯罪ビジネスと、ファミリーが崩壊の危機に立たされる様を描いた作品。
タイトルの『ゴッド・ファーザー』とはカトリック教文化において洗礼式に選定された代父母のことを指している。
今作に限らないが、視聴回数が分からないくらい観ている作品の1つ。
よく「噛めば噛むほど味が出る」というありがちな表現方法があるが、まさにそれに当てはまっている。
シリーズとして面白いのは勿論、1つの作品としてしっかり作り込まれているのが素晴らしい。
正直ストーリー自体はありふれた内容なのだが、その内容を俳優陣の細かい仕草や表情に至るまでの演技、各シーンを彩るインテリアや建物、カメラワーク、ライティング、要所要所で流れてくるBGMなどによって、その「良くある話」が「傑作」に昇華させている。
マフィアものということ、映画の上映時間が2時間57分という長さもあって敬遠している人も多いとは思うのだが、カテゴライズ云々は関係なく「映画」としての出来が素晴らしく面白いので観ていないという人には是非お勧めしたい。
登場人物が多い上に個性も強く、その人物同士の関係性も複雑なので把握するのが1度だと難しいとは思うが、観終わった後には「もう1回観たい」と思える事だろう。
ただ、流石にテーマがテーマなだけに「家族で」とか「子供と」というような映画ではないので、あくまでも善悪の区別がつく人の為に作られた至高のエンターテインメント。
ストーリー展開としてはアル・パチーノ演じる三男マイケルが、真面目な学生から兵隊を経て1大マフィアのボスとして変貌していくさまを描いているので、そういった意味ではサクセスストーリーとしても観れるかも?
そしてマフィアものと言えばの銃撃シーン、爆破シーンやバイオレンスさを感じさせるシーンも、ただただ単純にバイオレンスなだけでなく何処か芸術的。
これは前述したカメラワークを始めとする演出の賜物だろう。
そして時間の長さなど気にさせない俳優陣の圧巻の演技。
ヴィトーを演じるマーロン・ブランドの抑え目だがこれでもかと貫禄を感じさせる演技に目が釘付けになったかと思いきや、マイケルを演じるアル・パチーノの初々しい青年が徐々に徐々に残忍で冷酷なゴッドファーザーへと変貌していく様を見事に表現しきっていて、演技を通り越してこの世界の住人にしか見えなくなってくる。
語りたいことは山ほどあるのだが、ネタバレにもなってしまいそうなのでこのへんで。
マフィアものはどうしても現実離れしているように見えてしまい、感情移入しづらい作品が多い中、今作は物悲しいまでの家族愛を見事に織り交ぜていて感情移入せずにはいられない作品に仕上がっている。
小ネタ
コッポラ監督は当初125分の作品として編集したところ、パラマウントから「こんな作品は予告編にしかならない、もっと長くしろ」と要求した。
コッポラは黒澤明作品である『悪い奴ほどよく眠る』の冒頭が結婚披露宴から始まるという展開に感心し、本作でも採用した。
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『レッド・ドラゴン』感想・紹介・レビュー【哀れな怪物】
レッド・ドラゴン
2002年に公開されたアメリカ合衆国のサスペンス映画。
監督をブレット・ラトナー、脚本をテッド・タリーが務めた。
出演
- アンソニー・ホプキンス
- エドワード・ノートン
- レイフ・ファインズ
- ハーヴェイ・カイテル
- エミリー・ワトソン
- メアリー=ルイーズ・パーカー
- フィリップ・シーモア・ホフマン
序盤のあらすじ
1980年ボルチモア。
FBI捜査官ウィル・グレアム(エドワード・ノートン)は、犯罪精神医学の権威ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)の起こす連続殺人事件を追っていた。
レクターの逮捕にこぎつけたものの、ウィルはレクターにナイフで腹部を刺され生死を彷徨うほどの重傷を負う。
3年後、FBIを退職しフロリダ州マラソンの海辺で暮らすウィルのもとへ、元上司ジャック・クロフォード(ハーヴェイ・カイテル)が訪ねてくる。
アラバマ州バーミングハムとジョージア州アトランタで起きた連続一家惨殺事件の捜査協力を依頼されたウィルは、期間限定で現場へ復帰する。
一方、荒れ果てた屋敷に一人住むビデオ加工技師フランシス・ダラハイド(レイフ・ファインズ)は、自身の障害や生い立ちからくるトラウマに悩まされ、自らを脱却し超越することを望んでいた。
引用:Wikipedia
今作は、トマス・ハリスの小説『レッド・ドラゴン』を原作とした映画であり、ハンニバル・レクター博士のシリーズ4部作のうちの3作目。
『羊たちの沈黙』で登場するFBI捜査官クラリス・スターリングに出会う直前までを描いた作品となっている。
なので当然ではあるが、映画としては3作目で時系列的には小説が出版された順序と同じく『羊たちの沈黙』よりも前の物語。
サスペンススリラーとしてビッグネームにはなったが、1つの映画として考えてしまうとどうしても散漫な部分も多く、ストーリーが頭の中で繋がりにくい。
それもあってか、ストーリーとしては正直、原作を知っていないと分かりづらい部分が結構多い。
自分は原作を読んだことが有るのである程度補完しつつ、納得しながら観る事は出来ると同時に「これは果たして原作知らない人はどうなんだ?」と少し疑問に感じた。
時系列的にもストーリーの入口ということもあって、人物像もそこまで濃くなくキャラクターの設定が入ってきにくい。
個人的には今作を観る場合、原作を読んでから観る事をオススメする。
そうすれば様々なシーンで様々な感情が生まれると思う。
ここからは、原作を知っている人の場合という角度で書いていく。
ダラハイドの生い立ちは分かりにくかったが、レクターと面会する場面では『羊たちの沈黙』を彷彿とさせる演出はそれだけでグッとくるし、派手さはないもののキャスト同士の目で語るような演技は圧巻だった。
最近は直接的な残酷さで恐怖を煽るような映画が多い中、そういった表現は控え目なのにもかかわらず俳優陣の鬼気迫る演技によって物足りなさなどを感じる事もない。
勿論、「ウォーキングデッド』や『ソウ』のようなスプラッター映画じゃないとという人には物足りないとは思うが、連続殺人犯を追い詰めその謎を解明するといったストーリー構成が好きな人だったらどっぷりハマれるだろう。
評価が二転三転しているように見えるかもしれないが、正直これは難しい。
映画という作品として考えれば原作を知らなかったとしても楽しめるべきだとは思うのだが、今作は知らないとちょっと厳しい。
しかし知っていたとすれば存分に世界にハマり、このサスペンススリラーを満喫できるとは思うのでこういった感じになってしまう。
「シリーズもの」「原作があるもの」は総じて難しさを孕んでいるとは思うが、今作はそれがより顕著に出る作品になっていると感じた。
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『ゴーン・ガール』感想・紹介・レビュー【結婚は人生の・・・】
ゴーン・ガール
2014年に公開されたアメリカ合衆国のミステリースリラー映画。
監督をデヴィッド・フィンチャー、脚本をギリアン・フリンが務めた。
出演
- ベン・アフレック
- ロザムンド・パイク
- ニール・パトリック・ハリス
- タイラー・ペリー
- キャリー・クーン
- キム・ディケンズ
序盤のあらすじ
5回目の結婚記念日の朝、ニック・ダンは妻のエイミーが失踪したことに気づく。
父親の書いた児童文学のモデルとして、子供時代から有名だったエイミーの失踪でメディアは過激化し、夫ニックは、不幸な被害者から次第にの妻を殺した加害者として世間から見られるようになっていく。
一方、回想シーンではエイミーの視点から幸せだった結婚生活が崩壊していく様が、後に発見される日記を引用しつつ描かれる。
夫妻は不況の影響で仕事を失い、ニックの母親がガンになったため、エイミーが愛するニューヨーク市から夫の地元である片田舎ーサジへ引っ越さなければならなかった。
引用:Wikipedia
今作は、脚本を務めたギリアン・フリンによる同名の小説『GONE GIRL』を原作として、誰が見ても理想的な夫婦であるニックとエイミーだったが5回目の結婚記念日に突如として妻エイミーが姿を消し、リビングダイニングには大量の血痕、日記、結婚記念日の宝探しのメッセージが残され、エイミーに何が起きたのかをサイコロジカルスリラー的に描いた作品。
今作に限った話ではないのだが、特に今作は直接的なネタバレをしなかったとしても多くを語ってしまうと、どうしても様々な要素を仄めかすことになってしまうので難しい所ではあるのだが、それらを気にしすぎるとレビューがほぼ不可能。
なので、こういったブログを見ている人の場合はそこまで気にしないのかもしれないが、少しのネタバレも嫌という人は今すぐにブラウザバックをすることをオススメする。
物語の展開方法としては、冒頭に多くの謎を残しながら衝撃的な事件を描くことで視聴者の心をグッと引き込み、徐々に徐々にその背景が明かされていくと同時に理想的な夫婦のはずだった2人の関係性に変化があらわれる。
そして明らかになる2人の本当の関係性。
この展開方法のおかげで、見ている側は物語が進むたびにニックとエイミーに対する印象が二転三転する。
そして明らかになっていくだけでなく、より一層事件は泥沼化していく。
そんな中、現実でもよく目にするであろう「人の不幸を消費する人々」
盲目で派手さを求め独りよがりなメディアも相まって、表面的な人物像などしか報道することをせず、そのせいで多くの人が報道された角度とは別の角度から事件を見ようとはしない。
こういった現実でも起こりうる、というよりも良く起きている事柄を上手い事織り交ぜているので、感情移入は勿論だがこの物語に入り込みやすく出来ている。
ただ、作品の世界に入り込むことはほとんどの人が出来るとは思うのだが、作品のラストに共感できるかは正直人による。
所々都合のいい展開やツッコミどころもなくはないし、ラストを迎えてスッキリする人とモヤモヤする人と真っ二つに分かれる作品にはなっているが、その辺りは観ないと何とも言えない部分なので1度視聴して判断してみてほしい。
小ネタ
本作プロデューサーセアン・チャフィンによると、監督デヴィッド・フィンチャーはシーン平均50テイクは撮影していたと述べた。
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『シャッター アイランド』感想・紹介・レビュー【正気と狂気】
シャッター アイランド
2010年に公開されたアメリカ合衆国のサスペンスドラマ映画。
監督をマーティン・スコセッシ、脚本をレータ・カログリディスが務めた。
出演
- レオナルド・ディカプリオ
- マーク・ラファロ
- ベン・キングスレー
- ミシェル・ウィリアムズ
- エミリー・モーティマー
- マックス・フォン・シドー
序盤のあらすじ
1954年、連邦保安官テディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)とチャック・オール(マーク・ラファロ)ら捜査部隊は、ボストンハーバーの孤島(シャッターアイランド)にあるアッシュクリフ精神病院を訪れる。
この島でレイチェル・ソランドという1人の女性が、"The law of 4. who is 67?"(4の法則 67番目は誰?)という謎のメッセージを残して行方不明となった。
強制収容されている精神異常犯罪者たちの取り調べを進める中、その病院で行われていたマインドコントロールの事実が明らかとなる。
引用:Wikipedia
今作は、デニス・ルヘインが2003年に発表した小説『シャッター・アイランド (Shutter Island)』を原作とし、精神を病んだ犯罪者たちだけを収容する周囲を海に囲まれた”シャッターアイランド”から1人の女が姿を消す、という事件の捜査に訪れた連邦保安官が知ることになる驚愕の事実を描いた作品。
日本でこの作品が宣伝される際、「この映画のラストはまだ見ていない人には決して話さないでください」「登場人物の目線や仕草にも注目しましょう」というようなテロップが入るなど、様々な謎を含む作品。
観終わった後に作品内のあれはこうだったとか、いや違うこうじゃないか?とかここまで色々と語りたくなる作品も多くはない。
観ようとしている人には話さない方が良いのは確かだが、観た人同士で言い合いたくなる要素が物凄く多く仕込まれている。
ストーリー展開的な部分でもそうだが、登場人物の心理描写も基本は暗く重めでありつつも何処か意味ありげな雰囲気を常に醸し出しているのも、その要因の1つなのかもしれない。
そして詳細はネタバレになるので避けるが、登場人物が抱える過去のトラウマとして描かれる映像の中でそのシーンの少し前で提示された情報が散りばめられたりと、客観的に作品の謎を解明したくなるような要素も多いので観ていて飽きない。
作品のキャラクターに感情移入させるのも難しいが、作品の世界観をキッチリと理解させながらその世界観の中で展開される様々な謎をここまで考えたくさせるのも中々難しいだろう。
そのおかげもあって、テーマも含め作品は常に暗く陰気で異様なまでに閉鎖的な世界でストーリーが展開されていくのにも関わらず、しっかりと中身を観ているともう1度と言わず2度3度観たくなってしまう作品に仕上がっている。
原作が面白いというのは勿論なのだが、その面白さをしっかりと映画という映像作品に落とし込めている作品もそこまで多くないだろう。
そして複数回観て、作品のラストを含めた内容をしっかりと理解したうえでもう1度観ると様々なシーンで「なるほど」と思えることが多々ある。
登場人物の動きやちょっとした台詞など相当考えて作られているんだな、と感心させられるほどだった。
これは当たり前かもしれないが、俳優陣が1人1人しっかりストーリーを理解し演技を行っているからこそ成り立っているのだと思う。
ただ、何度も観たくなるとか考えさせられるとか言われると難しい映画で入り込みにくいのではないかと思ってしまう人も多いだろう。
しかし今作はそんなことは一切なく、誰もが何かあるのではと思うであろう音楽と映像によっていつの間にか作品の世界に引きずり込まれている。
ストーリーをしっかりと作り視聴者にメッセージを投げかけ、映画という作品として満足できる面白さに仕上げているのはかなり評価が高い。
どうしても雰囲気は暗いので、暗いというだけで苦手な人も居るとは思うのだが可能であれば是非1度観てみてほしい。
【ここからはネタバレになるので注意】
ロボトミー手術を開発した医師はノーベル賞も受賞している。
そして、当時アメリカでは当該病院が患者で溢れかえっていたという事情もあるが、様々な不都合に目を瞑りメリットだけ見て盛んに手術が行われていた。(アメリカだけに限った話ではないが)
こう考えると、具体的に何かを指している訳ではないが今現在推奨されている何かのシステムももしかしたら近い未来に禁止されたり、色々な問題が浮き彫りになるのかもしれないと考えざるを得ない。
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