洋画な日常

洋画まみれな人がネタバレを避けて紹介していくブログ

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『エジソンズ・ゲーム』感想・紹介・レビュー【直流と交流】

エジソンズ・ゲーム

エジソンズ・ゲーム(字幕版)

 

2017年に公開されたアメリカ合衆国の伝記ドラマ映画。
監督をアルフォンソ・ゴメス=レホン、脚本をマイケル・ミトニックが務めた。

出演
  • ベネディクト・カンバーバッチ
  • マイケル・シャノン
  • ノコラス・ホルト
  • キャサリン・ウォーターストン
  • トム・ホランド
  • サイモン・マニョンダ

 

序盤のあらすじ

19世紀、アメリカは電気の誕生による新時代を迎えようとしていた。
白熱電球の事業化を成功させたトーマス・エジソンは天才発明家と崇められ、大統領からの仕事も平気で断る傲慢な男だった。

裕福な実業家ジョージ・ウェスティングハウスは、大量の発電機が必要なエジソンの“直流”より、遠くまで電気を送れ て安価な“交流”の方が優れていると考えていた。
若手発明家のテスラも、効率的な“交流”の活用を提案するが、エジソンに一蹴されてしまう。

ウェスティング ハウスは“交流”式送電の実演会を成功させ、話題をさらう。
そのニュースにエジソンは激怒、“交流”は危険で人を殺すと、ネガティブキャンペーンで世論を誘導していく。

こうして世紀の“電流戦争”が幕を開けた。訴訟や駆け引き、裏工作が横行する中、ウェスティングハウスはエジソンと決裂したテスラに近づく。
果たしてこのビジネスバトルを制するのはどちらか?

 

今作は、1880年代のアメリカ合衆国にて電力の供給方法を巡って、直流送電派のトーマス・エジソンと交流送電派のジョージ・ウェスディングハウスが繰り広げた電流戦争の経緯と様子を描いた作品。

 

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現在の使われ方を簡単に説明しておくと

直流送電:長距離送電や系統周波数の異なる電力について電力融通を行う送電で使用されている。
交流送電:水力発電、火力発電、原子力発電などで作られた電気を変電所や送電線路、配電経路を経て一般家庭などに送電するために使用されている。

 

当時は直流と交流のどちらが選ばれるかということで、大きな注目を集めたが今現在生きている人々にとってはどうなったのかというのは周知の事実。
だがそれでも、映画としての完成度が高くこれでもかと魅せてくる。

 

いわゆる”偉人”というのは「変わった人だった」「自己顕示欲が強かった」とかそういう風に表現されることも多い。
しかし偉人たる才能や知能があってこそなのは勿論、現代で言う所の自己プロデュース力が無ければ時代関係なく偉人として名を残すということは中々難しいのだろう。
今作ではその表現方法がえげつないほど鮮明に描かれているのも良い。

 

トーマス・エジソンという1人の天才について色々調べたりしたことがある人は当然かもしれないが、あくまで天才発明家の1人としてしか知らない人にとっては今作のエジソンの描かれ方は一種の驚きがあるだろう。
作中でそういった人物像までもしっかりと描いていて、それが説明的になることは無くなされていて、尚且つそれがあることによって物語が成立している。

 

そしてエジソンと相対することとなる、ジョージ・ウェディングハウス。
彼が新聞社を巧みに利用し広めた造語が出てくるのだが、その意味を知ると同時に彼の卑劣さをも知ることになる。
エジソンの価値観だけでなく、ウェディングハウスの価値観もしっかりと描かれているのもあって「勝者」がどちらだったのかはっきりと決めにくい。

 

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伝記ドラマの中でも結構シリアスな作風、展開になっていて作中から感じるなんとなく重々しい雰囲気によってグッと引き込まれ見応えのある作品に仕上がっている。
実際は関係ないだろうが、製作過程に様々な問題があって登場人物のキャラ設定から何から色々と二転三転したというのも、もしかしたらその重々しさに寄与しているのかもしれない。

 

製作過程のトラブル

プロデューサーが監督に対して次々と修正要求を突きつけた。
トーマス・エジソンの描写が本来一癖も二癖もある男として描かれていたのにもかかわらず、一度は修正の結果ただの性格の良い人になってしまった。
本来関係のない重役たちまで編集作業に介入した。
そんな状況化にも関わらず急遽プレミア上映する決断により、監督は急ピッチな編集作業によって11.3㎏もやせてしまった。
プレミア上映の結果はあまり良くなく、プロデューサーは「自分が間違っていた、あの編集は大胆過ぎた」と今更伝えてきた。

 

上記に書ききれないほど様々なトラブルがまだまだあったのだが、詳細を知りたい人は作品のWikipediaを見ると酷さが分かると思う。


エジソンとウェディングハウス。
そのどちらの側にも視聴者からすれば賛否両論あるとは思うが、両極の価値観をしっかりと描き、人間という生き物の枠の広さ、奥深さ、浅はかさを垣間見ることの出来る良作に仕上がっているので是非1度観る事をオススメする。

 

 

 

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『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』感想・紹介・レビュー【隔離された翻訳家】

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

9人の翻訳家 囚われたベストセラー(字幕版)

 

2019年に公開されたフランス・ベルギーのサスペンススリラー映画。
監督・脚本をレジス・ロワンサル、共同脚本をダニエル・プレスリー、ロマン・コンパンが務めた。

出演
  • ランベール・ウィルソン
  • オルガ・キュリレンコ
  • アレックス・ロウザー
  • エドゥアルド・ノリエガ
  • シセ・バベット・クヌッセン
  • リッカルド・スカマルチョ
  • パトリック・ボーショー

 

序盤のあらすじ

フランスの人里離れた村にある洋館に、9カ国から翻訳家が集められた。全世界待望のミステリー小説『デダリュス』の完結編の各国語への翻訳のためだ。

しかし9人は、洋館の地下に隠された要塞のような密室に隔離されてしまう。

海賊行為と違法流出を恐れた出版元が著者の同意のもと、彼らを隔離して極秘に翻訳を行わせることにしたのだ。

9人は外出はおろか、電話やSNSなどの通信も禁止され、毎日20ページずつ渡される原稿をひたすら翻訳していく。

そんなある夜、出版社社長の元に「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば、全ページを流出させる」という脅迫メールが届く。

引用:Wikipedia

 

本作は『ダ・ヴィンチ・コード』などのダン・ブラウン原作小説『ロバート・ラングドン』の第4作目である『インフェルノ』出版の際に、海賊行為と違法流出を危惧した出版元が著者のブラウンの同意の上、各国の翻訳家を地下室に隔離して翻訳を行ったという事実をベースに描かれたスリラー映画となっている。

 

ストーリー的には伏線やその回収方法に至るまで、矛盾なく行われていてそういった意味での粗はそこまで目立たない。
メインとなる登場人物も10人以上居るのにも関わらず、変な設定でリアリティを損なわせることなく上手くキャラクターを立たせることにも成功していて、あまり洋画を観慣れていない人にありがちな「顔の区別がつかない」ということが少ないと思う。

 

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冒頭から物語の3分の1程度はそこまで大きな展開もなく淡々と進むのだが、徐々に時間軸がずれていくのもあって、時系列的にどの時点の話なのかがパッと見では分かりにくい。
中盤以降に重要人物がある程度絞られていき、終盤には結末に向かう為の導線がしっかりと作られているのでとある伏線に気付いた人はオチの予想が付いてしまうかもしれないが、無駄に難解にするようなこともなく分かりやすく楽しめる。

 

一度物語の世界観に入り込んでしまえば、どこまでが現実でどこまでが虚妄、どこまでが虚構でどこまでが真実かがスピーディーに切り替わっていくので最後まで目が離せない。
大胆かつ繊細、緻密な犯行にハラハラドキドキするだろう。

 

構成の仕方や登場人物のキャラなどは上記にある通り上手く描けているのだが、その分目立ってしまっている欠点がいくつかある。
ネタバレになるので詳細は避けるが、根本的な動機が弱すぎる点。
ラストに向けた展開の都合のよさが仕方がないにしても若干、無理が過ぎるような気がする点。
結末というかラストのカタルシスが薄くミステリーやサスペンスでの「こう来るのかやられた・・・」という感覚に浸りづらい点。

 

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何度か視聴し色々考えながら観たりもしたが、この3点に関してはどうしても気になってしまった。
どんでん返し的展開自体は悪くないのだが、この3点のせいでどうも釈然としない。
もうちょっとこの辺りが解消されれば気持ちよく観れるんだろうなぁという感じ。

 

フランス・ベルギーの共同制作だからというのもあるだろうが、フランス映画にしてはある程度魅せている感じはある。
しかしオルガ・キュリレンコなどキャストは豪華なのだが、変に捻っているのもあって魅せ切れていないのが本当にもったいない。


面白さの一定ラインは越えては来るが、それ以上の何かがあるかと言われると難しい。
題材や登場人物の個性の出し方は面白いだけに惜しいなぁと思わざるを得ない作品だった。

 

 

 

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『ソルト』感想・紹介・レビュー【彼女の目的とは】

ソルト

ソルト (字幕版)

 

2010年に公開されたアメリカ合衆国のスパイアクション映画。
監督をフィリップ・ノイス、脚本をカート・ウィマーが務めた。

出演
  • アンジェリーナ・ジョリー
  • リーヴ・シュレイバー
  • キウェテル・イジョフォー
  • ダニエル・オルブリフスキー
  • アウグスト・ディール
  • ハント・ブロック

 

序盤のあらすじ

ある日、CIAの元にロシアからの亡命者オルロフが出頭。

女性諜報員のイヴリン・ソルトが尋問するとオルロフは、かつて旧ソ連時代に訓練を受け、ソ連崩壊後もクレムリンの意向とは別にアメリカに潜入している多数のロシアのスパイたちは一斉に蜂起する時「Xデー」を待っており、その中の1人が近く行われるアメリカ副大統領の葬儀でそこに出席するロシア大統領を暗殺する計画があると話し、更にそのスパイの名は「イヴリン・ソルト」であると告げる。

それはすべてオルロフやイヴリンたちロシアのスパイしか知らない事実だった。

引用:Wikipedia

 

今作は主人公である”イヴリン・ソルト”がCIAのスパイなのか、それともロシアの二重スパイなのか、はたまた陰謀に巻き込まれたのかという大きな疑問によってストーリー展開がなされていく。
ロシアの二重スパイと思わせるかのようなシーンがあったかと思えば、CIAのスパイと思わせるようなシーンが映し出されたりと気持ちの良い混乱を与えてくれる。

 

ストーリーは全体的に登場人物の心理描写が掴みにくかったり、シナリオに工夫は見て取れるものの若干無理がありすぎる点もあり、そういった部分には違和感というか疑問が残るが、冒頭から緊張感のあるシーンの連続で一気に引き込まれるのも事実。

 

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そして様々な逃亡シーンや、とあるエレベーターでのシーンのアンジーが魅せるアクションが素晴らしい。
スピード感と豪快さを両立したかのような身のこなしとカメラワークによって、見応えのあるものになっている。

 

基本的にはアンジーが演じるソルトが孤軍奮闘するわけだが、そういう展開方法にするのであればもう少し工夫が欲しかった。
ソルトのアクションシーンなどは格好良いのは間違いないのだが、ソルトメインで話が進むので目立ってしまう点がある。

 

それはソルトの行動の動機や人物の背景がきちんと描かれていないが故に、シーンの説得力に欠けること。
主要人物全員とは言わないが、せめて孤軍奮闘するようなストーリーなのであれば主人公のソルトだけでももうちょっと丁寧に背景を描いても良かったような気はする。

 

それもあってか、ソルトという複雑な立場、設定の役柄の魅力を活かしきれていないように感じた。
アンジェリーナ・ジョリーの演技力が問題という訳ではなく、演出の仕方が不十分。

この作品の根幹とも言えるはずのソルトの目的についての説明が、物語の後半に出てくるたった1つの台詞のみで片付けていたりと、乱暴な面も見えるのが残念。

 

序盤からの展開のさせ方、シーンの移し方、緊張感と緊迫感を良いバランスで保ちながら進められているので、その辺りをもう少し詰めていたらさらに深く楽しめる作品になったのではないだろうか。

 

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アンジェリーナ・ジョリーが演じる『トゥームレイダー』のララ・クラフトのように美しく強い女性が好きなのであれば恐らく楽しめる。
アンジェリーナ・ジョリーにさほど興味がなかったり、内容の構成等を気にしてしまうタイプの人は楽しめるかと言われると若干疑問が残る、色々な意味で惜しい作品だった。

 

小ネタ

当初はトム・クルーズ主演で制作される予定だった。
代わって主演となったアンジェリーナ・ジョリーの希望により、夫のブラッド・ピットがカメオ出演するよいう話があったが、結局実現しなかった。

 

 

 

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『アデライン、100年目の恋』感想・紹介・レビュー【老いることの幸せ】

アデライン、100年目の恋

アデライン、100年目の恋(字幕版)

 

2015年に公開されたアメリカ合衆国のロマンスファンタジー映画。
監督をリー・トランド・クリーガー、脚本をJ・ミルズ・グッドロー、サルヴァドール・パスコウィッツが務めた。

出演
  • ブレイク・ライヴリー
  • ミキール・ハースマン
  • ハリソン・フォード
  • エレン・バースティン
  • キャシー・ベイカー
  • アマンダ・クルー

 

序盤のあらすじ

若く美しい女性アデラインは、交通事故と落雷による偶然が重なり、不老の体となってしまう。

その事実を知られないようにするために、アデラインはたびたび名前を変える必要があった。

当然のごとく、アデラインの恋は長続きすることがない。

サン・フランシスコに住みジェニーと名乗っているアデラインは、ニューイヤー・パーティでエリス・ジョーンズという青年と出会って、つき合い始める。

ジェニーはエリスの両親の結婚記念日を祝うため、彼の実家を訪れるが、そこでエリスの父親ウィリアム・ジョーンズに会うと、彼は初対面のはずのジェニーを見た途端に驚きの表情を浮かべ、「アデライン」と呼びかける。

引用:Wikipedia

 

今作は、アデラインという幸か不幸か事故の影響で老化が止まってしまい、100年以上も生き続けた1人の女性の数奇な人生を描いた作品。
多くの人が2008年に公開されたブラッド・ピット主演作品である『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を思い浮かべるだろう。

 

タイトルやあらすじからは確かに部分的に似通った点はあるかもしれないが、作風や内容的にはかなり違う。
重く暗めの雰囲気で終始進むあちらとは違い、心地よいストーリー展開と凛としたアデラインの美しさ、舞台の街並みの風景や様々な景色は心に安らぎを与えてくれるような情景。

 

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内容的にも、ただ単純に老化という概念がなくなってしまったというだけでなく、そうなってみないと分からないであろう苦悩や葛藤、長く生きてきたことによって悲しくも積み重ねることの出来た知性や心の強さで、様々な困難を乗り越えていこうとする真っすぐなアデラインの人柄なども丁寧に分かりやすく描かれている。

 

そして言うまでもなく、そのアデラインというキャラクターを設定以上に魅力的に感じさせる一因となっているのは、彼女を演じたブレイク・ライヴリー。
表面的な美しさだけでなく、心優しい声とその話し方や長い月日生きてきたが故に感じる知的な美しさは勿論のこと、何処か儚さや切なさを感じさせる笑顔を見事に表現している。

 

今作の魅力はもう1つ、エリスの父親ウィリアム・ジョーンズを演じたハリソン・フォードだ。
息子が家に連れてきたアデラインを見た時の信じられないという驚きの中に若干の嬉しさを含んでいるような表情や、それを心の中で否定するような目の演技は流石といわざるを得ない。

 

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人間が「普通に老いる」ことの出来る幸せというものを存分に感じさせてくれる。
実際にアデラインの立場にならなければ決して理解出来る葛藤ではないと思うが、どんな関係性の人だとしても常に置いてけぼりを食らわされることの悲しさ、寂しさ。

 

はるか昔から「不老不死」が人の夢のように語られることが多いが、本当にそうだろうか。
周囲の人々と共に成長し共に老いていき共に死んでいくことは嫌な事だろうか。
詳細は避けるが、作品のラストで自分のとある部分を見て、恐らく老いることが出来なくなってから初めて安堵の表情を浮かべるアデライン。
その表情こそが全てを物語っていると視聴者は感じることが出来るだろう。

 

基本的にはファンタジーなので、根本的な設定や出来過ぎな展開に違和感を持ってしまう人は受け付けないと思うが、『天使のくれた時間』『ある日どこかで』や冒頭にも書いた『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』などが好きであれば、視聴後に心優しい穏やかな気持ちになれる点で通じるものがあるので、観ることをオススメする。

 

 

 

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『500ページの夢の束』感想・紹介・レビュー【何かが心に残る作品】

500ページの夢の束

500ページの夢の束(字幕版)

 

2017年に公開されたアメリカ合衆国のドラマ映画。
監督をベン・リューイン、脚本をマイケル・ゴラムコが務めた。

出演
  • ダコタ・ファニング
  • トニ・コレット
  • アリス・イヴ
  • リヴァー・アレクサンダー
  • パットン・オズワルト
  • マータ・ギブズ

 

今作は脚本も務めたマイケル・ゴラムコの短編戯曲『Please Stand By』を原作とし、『スタートレック』が大好きでその知識では誰にも負けない自閉症のウェンディが、脚本コンテストに応募するために愛犬ピートとともに、ハリウッドへの長い長い旅に出る壮大な奮闘劇を描いた作品。

 

述べたように『スタートレック』という作品が主人公の行動理由の大きな1つなので当然かもしれないが、『スタートレック』を知っているかどうかで今作の理解度の深さは変わってくる。

 

原作タイトルであり、今作の原題である『Please Stand By』というのも『スタートレック』内で転送装置で出かける際に使われる決まり文句だったりする。
他にも色々知っていると今作を見るにあたってメリットがあるので、もし時間や機会があるようならちょっと調べるなりするといいかもしれない。

 

序盤のあらすじ

『スタートレック』の並外れた知識を持つ自閉症のウェンディはグループホームで暮らし、スコッティのケアを受けている。

姉オードリーが現れ、ウェンディに娘の写真を見せ、二人が住んでいた家を売ることにしたと話す。

パラマウントピクチャーズ社の『スタートレック』の脚本コンテストに参加しようとしている。

ウェンディはコンテストの賞金で家を買いもどすと言うが、オードリーは納得しない。

ウェンディはコンテストへの脚本投稿の締め切りを逃し、直接持ち込むことにする。

そのため、500ページの原稿を持ってハリウッドへ旅に出る。

引用:Wikipedia

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「アメリカ最強の女優」は流石の演技力に表現力だなと、改めて思わされた。
難しい役どころを彼女ならではの解釈をしたうえで役柄を理解し演じているおかげで、ステレオタイプと言われがちな自閉症キャラにはならずに、1人の人としての魅力に溢れたキャラクターになっている。

 

過去にも様々な難しい役柄を演じきっている彼女ならではの演じ方とでも言うのだろうか、役を演じるにあたっての独特な感性を感じさせてくれる。
彼女の魅力だけの作品というわけではないが、今作の魅力は結構な割合でダコタ・ファニングが占めていると言っても過言ではないかもしれない。

 

施設の近所から外に出たことのない人が、遠く離れた場所まで1人で旅に出るという事自体凄まじく勇気の必要なことだろう。
それだけ主人公は『スタートレック』を愛していて、且つ作品を作りたいという熱く強い信念があったことが分かる。

 

その旅路で遭遇する困難や不幸、そして親切で心優しい人々。
普段そこまでこの系統の映画を観るという訳ではないのだが、ハートウォーミングで心温まるストーリーもやっぱり良いなぁとしみじみと感じる。

 

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ストーリー的にはどっちかというとメッセージ性が強いわけではないのだが、それが逆にこの作品をより良い物にしている。
気軽に観ることが出来て、ダコタ・ファニングの魅力たっぷりの映像に癒され、小気味よいテンポ感が気持ちよく、観終わった後には少しだけ和んで、少しだけ勇気を貰い、少しだけ何かやってみようという気持ちになる。

 

主人公の様に何かしらの病を抱えているわけじゃなくとも、仕事だったり恋愛だったり人間関係で少しだけ前に進む勇気が欲しい、それさえあればと思う人は多いのではないだろうか。
この映画はその「少しだけ」前向きにさせてくれるほっこりとした映画に仕上がっている。


決して制作費を膨大に掛けた超大作でも、話題作でもないかもしれない。
しかし本作を観ると何かが自分の心の中に残り、その何かによって前向きにさせてくれる素敵な映画。

 

 

 

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『風をつかまえた少年』感想・紹介・レビュー【I try and I made it】

風をつかまえた少年

風をつかまえた少年(字幕版)

 

2019年に公開されたイギリスのドラマ映画。
監督・脚本をキウェテル・イジョフォーが務めた。

出演
  • マクスウェル・シンバ
  • キウェテル・イジョフォー
  • アイサ・マイガ
  • リリー・バンダ
  • ジョセフ・マーセル
  • ノーマ・ドゥメズウェニ

 

今作は、ウィリアム・カムクワンバとブライアン・ミーラーの回顧録である『風をつかまえた少年』を原作としている。
同時にキウェテル・イジョフォーの長編映画監督デビュー作品でもある。

 

ウィリアム・カムクワンバとは

ウィリアム・カムクワンバ(William Kamkwamba、1987年8月5日 - )は、発明家として知られるマラウイ人の大学生である。

カムクワンバはわずか14歳のときにユーカリの木(Eucalyptus globulus )と自転車の部品、および身近で入手できた廃品を利用して風車を製作し、風力発電によってマシタラ村(Masitala)にある自宅で多少の電気製品を使えるようにしたことで、世界的に有名となった。

引用:Wikipedia

 

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序盤のあらすじ

2001年、アフリカの最貧国マラウイを大干ばつが襲う。

14歳のウィリアムは飢饉による貧困で学費を払えず通学を断念するが、図書館で一冊の本と出会い、独学で風力発電のできる風車を作り、乾いた畑に水を引くことを思いつく。

いまだに祈りで雨を降らせようとする村で、最愛の父でさえウィリアムの言葉に耳を貸さない。

それでも家族を助けたいという彼のまっすぐな想いが、徐々に周りを動かし始める。

引用:2018 BOY WHO LTD / BRITISH BROADCASTING CORPORATION

 

志や熱意というものが如何に人間にとって重要なのかというのを考えさせられる。
志、熱意、目的、目標を持って学べば自分が変わり、環境を変え、周囲の人の意識も変え、人生そのものを変えられる。
これは何処の国に居ても言えることだが、読み書きが出来るということの幸せは本当に大きい。

 

学校に行くことが出来るならある程度の知識や教養を得ることは可能だろう。
しかし、仮に学校に行けずとも読み書きさえ出来るのであれば「学ぶ」ということはいくらでも可能。
人間、生を受けてから死に至るまで勉強とは良く言ったもので、学ぶことの大切さを痛感させられる映画。

 

日本に限った話ではないが、世界的に見て恵まれた国や地域で生活をしていると「恵まれている」ということがどうしても当たり前になってきてしまう。
知識も含め物資も何でも当然のように手に入り、最低限の環境が補償されていることがどれだけ幸せな事だろうか。

 

こういった環境で暮らしている自分たちこそ、学ぶことの大切さを再度考えるべきだろう。
大人はある程度考えた上で観る事が出来るだろうから伝わるとは思うが、個人的には子供たちこそ今作を観て感じてもらいたい。

 

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映画という作品として観ても、いわゆるサクセスストーリー的な内容で尚且つ実話ベースとなるとどこかクサさを感じることが多いのだが、今作は俳優陣の見事な演技力と制作陣の話の構成力によってそういったものを一切感じずに観る事が出来た。

 

映画とは関係ないが、ウィリアム・カムクワンバが2007年にTEDでの公演で語った

”I try and I made it”

(=やってみたら、出来た)

というシンプル極まりない言葉が、ウィリアムの背景を考えるとこれ以上なく素晴らしく思え心に響いた。

 

この作品は要はモノづくりな訳だが、モノづくりだけでなく別な分野で働く人にも響く言葉ではないだろうか。
ウィリアムに比べたらとてつもなく恵まれた環境、状況に居る自分たちだったら今よりもっと出来るのではないだろうかと思えてくる。

 

自分の為に何かするのは勿論大切な事だが、ウィリアムのように他者のことを思う利他の精神を持つことも時には大切でそれによってより大きなことを成しえることが出来るのかもしれない。

 

 

 

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『モリーズ・ゲーム』感想・紹介・レビュー【転落と成功と・・・】

モリーズ・ゲーム

モリーズ・ゲーム(字幕版)

 

2017年に公開されたアメリカ合衆国の伝記映画。
監督・脚本をアーロン・ソーキンが務めた。

出演
  • ジェシカ・チャステイン
  • イドリス・エルバ
  • ケビン・コスナー
  • マイケル・セラ
  • ブライアン・ダーシー・ジェームズ
  • クリス・オダウド

 

今作はモリー・ブルームが2014年に出版した自叙伝である『Molly's Game: From Hollywood's Elite to Wall Street's Billionaire Boys Club, My High-Stakes Adventure in the World of Underground Poker』を原作としている。
そしてアーロン・ソーキンの映画監督デビュー作。

 

序盤のあらすじ

子供のころから厳しいトレーニングを課せられてきたモリー・ブルームは、モーグルでオリンピック出場を嘱望されるまでになった。

しかし、ソルトレイクシティ五輪の出場資格を得るために出場した大会で重傷を負ってしまい、それが原因でスキー選手の道を諦めざるを得なくなってしまった。

法律家の道を歩もうとしたモリーだったが、どうにも決心を固めることができなかった。

そこで、彼女はロサンゼルスに移住し、自分を見つめなおす日々を送ることにした。

引っ越してすぐ、モリーはクラブで働き始め、そこで不動産業を営むディーンと知り合いになった。

引用:Wikipedia

 

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人間の人生なんて、悪い時もあれば良い時もある上に第三者から見たら本人が思っているほど悪い状態には見えないこともある。
そして何だかんだ行動していればなんとかなるような気にさせてくれる作品。

実話ベースに作られているのもあって、ある程度の脚色はあるみたいだがリアリティは失われていないし、映像もファッショナブルでテンポも良く最後まで飽きることなく見ることが出来る。

 

主人公を演じたジェシカ・チャステインもその役柄にピッタリで、女性の魅力を存分に持ち、頭が非常に切れて、商売の才能もあり、どんな時でもエネルギッシュに行動するモリーという女性をこの人以外居ないんじゃないかと思わせる熱演。
スポーツの道を諦め、ある意味では両極の位置にあるギャンブルの道で生き抜いていく1人の人間の逞しさと強かさ、自分の中にしっかりとした矜持と信念を持った男前な女性を完璧に演じきっている。

 

魅力あふれるジェシカ・チャステインの演技力によって、一定のラインは越えているのだがストーリー展開の仕方や時間の使い方に関してはやはり監督デビュー作というのもあってか、気になる点も多々ある。
『ソーシャルネットワーク』『スティーブ・ジョブズ』などの脚本を手掛け、今作の脚本にも関わっているアーロン・ソーキン監督。
序盤から中盤にかけての、一気に駆け上がるような視聴者を引き込む展開は気分良く観ていられるのだが、それ以降テンポが落ちて若干ダレてしまうのが残念。

 

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時間の使い方に関しては、恐らく監督の中には様々なやりたいことが有り2時間20分という時間の中では表現しきっていないのだとは思うが、この実話ベースのストーリーを1つの作品として扱うのであれば必要のない台詞や演出が多い。
個人的には結構な量の台詞やシーンを省略しても、ストーリー上は何も問題がなくむしろスムーズに進んだのではないかと感じた。

 

今作は実話ベースの作品なので一概に比較は出来ないが、こういった話の構成や展開だとニコラス・ケイジが主演した『ロード・オブ・ウォー』がお手本的作品なのではないだろうか。
社会的メッセージを込めながらも、コミカルな展開を盛り込み万人が観易く説明的になっていないものの分かりやすく最後までテンポよく進んでいく仕上がりは学ぶべきところが多いと思う。

 

 

『ロード・オブ・ウォー』の記事はこちら

westernpainting.hatenablog.jp

 

 


1人の女性の転落と成り上がりを描いた波乱万丈な映画。
成り上がるための努力、間違った決断をしたが故の転落、そしてラストに彼女が手に入れた物から同じ境遇の人というのはまず居ないとは思うが、要所要所で共感できる部分もある良い映画に仕上がっている。
良質な脚本を多数手掛けてきたアーロンなので、今後の手腕に期待したいところだ。

 

 

 

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『ヘッドハンター』感想・紹介・レビュー【劣等感が故に】

ヘッドハンター

ヘッドハンター(字幕版)

 

2011年に公開されたノルウェー・ドイツのクライムサスペンス映画。
監督をモルテン・ティルドゥム、脚本をウルフ・リュンベリ、ラーシュ・ギュドゥメスタッドが務めた。

出演
  • アクセル・ヘニー
  • ニコライ・コスター
  • シヌーヴ・マコディ・ルンド
  • ユーリー・ウルゴード
  • アイヴァン・サンデル

 

序盤のあらすじ

ロジャーは、表向きは有能なヘッドハンターとして成功し、美しい妻ダイアナと誰もがうらやむような優雅な生活を送っているが、裏では美術品泥棒を働いている。

それは168cmという低身長に対するコンプレックスから、妻に贅沢な生活をさせるためのものであったが、その一方で身体だけの関係の愛人もいた。

そんなある日、画廊を経営する妻の開いたパーティで、電子機器ビジネスで成功した外国人実業家のクラスと出会ったロジャーは、彼が高価な絵画を所有していることを知ると、その絵画を盗む計画を立てる。

引用:Wikipedia

 

今作は、ノルウェーの作家ジョー・ネスボの小説『ヘッドハンターズ』を原作として描かれている。
ヘッドハンターという顔は表向きで、実際の彼は明日の生活もどうなるか分からないギリギリな状態の借金だらけの絵画泥棒が主人公。

 

ストーリー内には、裏切りや心の闇を盛り込みつつ展開の読みづらい逃亡劇にテンポの良いアクションシーンも満載。
それでいて、主人公とその妻の微妙な夫婦関係を当人の葛藤を含みつつ描いている。
色々な要素を含んではいるが、しっかりとサスペンスらしくヒリヒリする緊張感も味わえる演出は監督、脚本の力量が優れていることを感じさせてくれる。

 

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そんな作品を更に良い物に昇華させているのが、主演のアクセル・ヘニーだろう。
作中で両極端な立場のその両方を地に足ついたリアリティを損なわない見事な演技は素晴らしい。
中々ハリウッド映画だけを観る人だと知ることのない俳優陣だとは思うが、周りを固める俳優陣もこの優れた作品の魅力を最大限に引き出すことの出来る演技力の持ち主。

 

冒頭の絵画を盗み出すシーンは正直お世辞にも引き込まれる映像とは言えないが、その後の展開は目を離せないスピーディな展開で一気に持っていかれると思うので、出来たら冒頭だけで「これは失敗した」とは思わずに1時間36分と軽く見ることが出来るので是非見続けて欲しい。

 

勿論、1時間36分という時間の中でこの内容をまとめきるのは中々難しい部分があったのか、きちんと観ると引っかかる部分がないわけではない。
敵役が自分の目的のために様々な行動をするのだが、正直その行動は目的達成の為には最適とはとてもじゃないが思えない。
主人公の目的にとある技術を盗むというものがあるのだが、その技術が作中で全く明らかにならないので、盗むという行動にいまいち共感しにくい。

 

他にも気になるところがあるにはあるのだが、古来からやられ尽くしたテーマをあえて使い、主人公の低身長というコンプレックスをベースにリアリティを加え1つの作品として成立させていることを考えれば必要十分ではある。

 

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作品の展開や盛り込んでいる要素も、サスペンスにスリラーにアクションにミステリーをどれかに偏り過ぎることなくバランスよく散りばめられていて楽しみやすい。
伏線の回収方法も、仰々しい演出をすることなくスムーズにテンポよく行われるのも観ていて気持ちが良い。

 

ラストはある程度上手くいきすぎ感はあるが、それはそれとして大目に見れば十分娯楽作品として成立していて万人が楽しめるのではないだろうか。

 

作品とは直接関係ない余談ではあるが、主人公は低身長がコンプレックスと書いたが設定の身長は168㎝と日本で考えるとそこまで強いコンプレックスを持つほどの身長ではない。
しかし、北欧という地域は世界的に見ても高身長が非常に多く、平均で180cmを越えてくるような国が有ったりする。

 

 

 

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