洋画な日常

洋画まみれな人がネタバレを避けて紹介していくブログ

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『ハリエット』感想・紹介・レビュー【モーセと言われた1人の人間】

ハリエット

 

2019年に公開されたアメリカ合衆国の伝記映画。
監督・脚本をケイシー・レモンズ、共同脚本をグレゴリー・アレン・ハワードが務めた。

出演
  • シンファ・エリヴォ
  • レスリー・オドム・Jr
  • ジョー・アルウィン
  • ジャネール・モネイ
  • ジェニファー・ネトルズ
  • ヴァネッサ・ベル・キャロウェイ
  • クラーク・ピータース

 

序盤のあらすじ

1849年、主人が亡くなったことをきっかけに、奴隷のハリエット・タブマンはフィラデルフィアへと逃亡することにした。

道中、ハリエットは地下鉄道の構成員たちに助けられ、彼らと親交を深めていった。フィラデルフィアに到着した後、ハリエットは地下鉄道の「車掌」として活動するようになった。

「車掌」とは奴隷たちを南部から北部・カナダまで誘導する係であった。

ハリエットは「車掌」として数百人の奴隷の逃亡を手助けした。

そんなハリエットには多額の賞金が賭けられており、腕利きのバウンティハンターたちが彼女の行方を追っていた。

しかし、ハリエット及び彼女が誘導していた奴隷たちが捕まることは1回もなかった。

 引用:Wikipedia

 

今作は、アメリカ合衆国メリーランド州ドーチェスター郡出身の奴隷で、その後奴隷解放運動家や女性解放運動家として活動したハリエット・タブマンの人生を当時のアメリカ合衆国における奴隷たち、その奴隷たちを取り巻く環境などを描きながらハリエットの行った勇気ある活動を映像化した作品。

 

 

ハリエット・タブマンとは

ハリエット・タブマン(1820年又は1821年-1913年3月10日)はメリーランド州出身の奴隷で後に奴隷解放運動家などとして活動した女性。特に、黒人奴隷を密かに逃がした地下鉄道の女性指導者の1人として知られている。その功績から尊敬の念を込めて、「女モーセ」「黒人のモーセ」とも呼ばれていた。

 

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2016年には、アフリカ系アメリカ人としては初となる「20ドル札」のデザインへの採用など偉人的な扱いではあるが、その人生は決して恵まれてなどおらず、長年の奴隷生活や奴隷監督からの肉体的虐待に耐えながらも、その際に受けた頭部への殴打は後遺症という形で残り生涯にわたってナルコレプシーとてんかんに悩まされていた。

 

そんな当時のアメリカでは何処にでもいる1人の奴隷の人生を描いているのだが、やはりこういった作品を観た時に感じるのは「人種から来る思い上がり」ほど哀れな物はないということだ。
そして哀れであると同時に、それが人にとってどれだけ残酷で理不尽なことなのかは言うまでもないだろう。

 

何処の国もある程度は同じような歴史を重ねてきた側面もある。
そしてそれらはさほど昔の事ではないという事も考えさせられる部分だ。
時代の流れや、周辺国の利害の一致でナチスドイツなどは破滅の一途を辿った訳だが、根本でやっていることはそのナチスドイツとほとんど変わらないというのだから救いようがない。

 

勿論、ナチス政権を擁護する意図は一切ないのだが、あれより程度がマシなら人をモノとして扱って良いというような道理はないだろう。
それが100年や200年という、ほんの少し前の時代には当然のようにそこにあり、人の生活の中に収まっていたのだから「人」というのは学ばない生物ということを映像からヒシヒシと感じる。

 

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しかし、人種などという下らない括りをすることなく「人」として考え「人」として接した人々も居たというのが救いだろうか。
現代とは全く違う時代背景が存在する当時のアメリカで、非国民扱いを受けても仕方がないとも言える行動をさも当然の如く行った肌の色が少し違うだけのアメリカ人たちが居たという事を、今現在アメリカで生活する人々はどう考えるのだろうか。


勿論、アメリカだけでなく世界中で起こる万国共通の問題だということも、この映画を通して知って考えてみてほしい。
「人種」などという括りが無くなる日は来るのだろうか、途方もない願いだとは思うが来ることを強く願う。

 

 

 

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『キャスト・アウェイ』感想・紹介・レビュー【人生の漂流】

キャスト・アウェイ

キャスト・アウェイ (字幕版)

 

2000年に公開されたアメリカ合衆国のドラマ映画。
監督をロバート・ゼメキス、脚本をウィリアム・ブロイルズ・ジュニアが務めた。

出演
  • トム・ハンクス
  • ヘレン・ハント
  • ニック・サーシー
  • ジェニファー・ルイス
  • ピーター・フォン・バーグ
  • クリス・ノース

 

序盤のあらすじ

1995年12月。

チャック・ノーランド(トム・ハンクス)はフェデックス倉庫の生産性解決に世界中を飛び回るシステムエンジニアである。

彼はテネシー州メンフィス在住のケリー・フレアーズ(ヘレン・ハント)と長年付き合っている。

親族と過ごすクリスマスの最中、チャックはマレーシアでのトラブル解決のため呼び出される。悪天候のため、彼の乗った貨物機は太平洋に墜落する。

彼は沈みゆく機体からただ一人脱出し、緊急用救命ボートに乗り込み意識を失う。一夜明け気付くと、ある島の海岸に漂着している。

そこは、クック諸島の南方600マイルに位置する島であった。

彼か島を探検すると、無人島であることが判明する。

引用:Wikipedia

 

今作は、ロバート・ゼメキスとトム・ハンクスの『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)以来2度目のタッグとなる作品。
とある無人島(撮影に使用されたのは実在するモンドリキ島)にタイトルの通り漂着(キャストアウェイ)した1人の男のサバイバル生活を描いていて、作中のほとんどのシーンをトム・ハンクス1人で演じている。

 

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ただ、サバイバル生活を描いている作品ではあるのだが単純な1人の男が無人島で如何にしてサバイバルしていくかというだけではない。
人の人生そのもののキャストアウェイ(=漂流)を同時に描いている。
墜落した飛行機に乗り合わせ、運が良いのか悪いのか無人島に流れ着き、無人島という過酷な環境を生き抜いていく主人公だが、元の生活に戻っても過酷な環境という意味では変わらないのかもしれないと思わされる。

 

今作の最大の魅力は人間という生物の生命力への称賛と、人間はあくまでも社会的生物であるということを改めて考えさせられるとともに、現代へのアンチテーゼだろう。
主人公の職業は世界中を飛び回るFedexの社員。
長距離の移動、時間の正確性などを要求される業界で長らく生きてきたという設定だからこそ、無人島という時間の概念もなく狭く限られた中でしか身動きが取れないサバイバル生活がこれでもかと活きてくる。

 

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作品の前半部分では、水、火、食糧を確保するという事が如何に困難で如何に重要かを視聴者に分からせることで、生死を分けるギリギリのサバイバルに引きずり込んでいく。
1度この世界観に引きずり込まれてしまえば、主人公のチャックとともに知恵や知識のすばらしさ、生きるということの難しさ、生命の力強さや尊さ、社会的生活が送れる事の有難さをこれでもかと感じる事だろう。

 

この序盤で繰り広げられる1分1秒を争うサバイバルの様子と、ラストシーンの周囲に広がる広大な景色を見回す様子の対照的な演出の仕方が素晴らしく、今作のまとめ方としてこれ以上ないと思わされた。
映像的な派手さがある作品ではないかもしれないが、これは確実に名作の1つに並ぶであろう素晴らしい作品だった。



小ネタ

トム・ハンクスは役作りのために22.7㎏もの減量をした。
今作はトム・ハンクスが設立した制作会社である「プレイトーン」の第1作目。

 

 

 

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『ザ・フォージャー 天才贋作画家 最後のミッション』感想・紹介・レビュー【親子の姿】

ザ・フォージャー 天才贋作画家 最後のミッション

ザ・フォージャー 天才贋作作家 最後のミッション(字幕版)

 

2014年に公開されたアメリカ合衆国のクライムサスペンス映画。
監督をフィリップ・マーティン、脚本をリチャード・ドヴィディオが務めた。

出演
  • ジョン・トラボルタ
  • クリストファー・プラマー
  • タイ・シェリダン
  • アビゲイル・スペンサー
  • アンソン・マウント
  • マーカス・トーマス
  • ジェニファー・イーリー

 

序盤のあらすじ

天才的な腕を持つ贋作画家のレイは、刑務所から一刻も早く出所するため、犯罪組織のボスであるキーガンと裏取引を行った。

そうまでして彼が出所したかった理由は、最愛の息子であるウィルがガンにより余命が少ないと知ったためであった。

出所後ウィルとの再会を果たしたレイは、何とか父と子の間に出来た溝を埋めようと「どんな願いも3つ叶えてみせる」という約束をウィルと交わす。

それからレイはウィルが望むことを出来る限り叶えていき、父と子の関係はぎこちなくも次第に改善していくのだった。

引用:Wikipedia

 

今作は、天才的贋作画家の主人公がガンに罹ってしまった息子の傍に居るために、組織のボスに手をまわして早期出所したものの、その代償としてボストン美術館にある「とある名画」を盗み主人公が書いた贋作とすり替えるという、無茶な命令を受けた主人公が詐欺師でもある父親を含めた4人で、誰もが驚く作戦を実行していく様を描いた作品。

 

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完全に個人的な意見にはなるが、この作品の最大の魅力は主人公のレイを演じたジョン・トラボルタの演技だ。
多くの人が『サタデーナイトフィーバー』のイメージだったり、テロリストや悪役のイメージを未だに持っている人が多いであろうジョン・トラボルタだとは思うのだが、とても人間味あふれるヒューマンチックな役柄がドンピシャにハマっている。

 

元々細かい心理描写を必要とする、基本的には難しい役どころこそジョン・トラボルタは本領を発揮するタイプだと思っていたのもあって、より一層今作の演技が光って見えた。
勿論、歳を重ねた事によってそういった役柄が合うようになったというのもあるとは思う。そして、若い頃のイメージを長い間引きずってしまう俳優が多く、そのイメージをどのタイミングで逸脱するかというのは中々難しい部分で、ジョン・トラボルタもその1人だったがやっと「来たな」と思わせてくれる作品だった。

 

ストーリー的にも、単純な絵画をベースとしたクライムサスペンスというだけでなく、1つの何処にでもあるような家族愛をしっかりと描きつつも、心地よいミスリードなども盛り込みつつ上手く作品に落とし込んでいる。
一応カテゴリーは「サスペンス」「クライムアクション」というような形にはなっているが、主人公である天才贋作画家のヒューマンドラマとも言えるかもしれない。

 

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末期のガンに限った話ではないが、人生の瀬戸際が自分や家族などに訪れることは誰にでもあるだろう。
そんな時だからこそ、愛する者同士で心の底から「今だからこれがやりたい」という本能から来る望みをさらけ出し、共有し、解決していこうとする様は色々と考えさせられるシーンだった。

 

勿論、今作の場合は親が服役していたり麻薬の常習者だったりとイレギュラーな部分が多々あって、実際は同じようにはならないとは思うが、こういう親子関係が故に言える台詞やお互いが「あるべき親子」を必死で演じようとする姿を見ているとそれだけで込み上げてくるものがあるいい作品だった。

 

 

 

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『リンカーン弁護士』感想・紹介・レビュー【司法の在り方】

リンカーン弁護士

リンカーン弁護士 (字幕版)

 

2011年に公開されたアメリカ合衆国のサスペンス映画。
監督をブラッド・ファーマン、脚本をジョン・ロマーノが務めた。

出演
  • マシュー・マコノヒー
  • マリサ・トメイ
  • ライアン・フィリップ
  • ウィリアム・H・メイシー
  • ジョシュ・ルーカス
  • ジョン・レグイザモ
  • マイケル・ペーニャ

 

序盤のあらすじ

高級車リンカーンの後部座席をオフィスにL.A.中の法廷を駆けめぐるミック・ハラーは、金次第で麻薬売人や売春婦の容疑を晴らす敏腕弁護士。

ある日、資産家の御曹司ルイス・ルーレが女性への殺人未遂容疑で告発され、弁護を担当することに。

楽勝で高額な報酬にありつけると勇むミックだったが、過去にミックが弁護を担当した別の殺人事件の真犯人がルイスではないか、という衝撃的な疑惑が浮上。

ルイスの身辺を調べ始めたミックの周りにルイスの魔の手が迫り、やがて危険はミックの元妻マギーや娘にまで及び始める...。

引用:2011 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LCC And LIONS GATE FILMS INC.ALL RIGHTS RESERVED

 

今作は、マイクル・コナリーが2005年に出版した同名ベストセラー小説『The Lincoln Lawyer』を原作としたサスペンスエンターテインメントで、報酬次第でどんな相手でも弁護する敏腕弁護士のミック・ハラーがとある事件を担当したが故に、様々な危機が彼だけでなく家族にまで及びそれに抗う姿を描いた作品。

 

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報酬次第でどんな相手でも、とそれだけ聞くと犯罪を犯して尚どうにかして無罪や減刑を考えようとする悪人たちを弁護することに、何も後ろめたさなど感じず金勘定だけしている腐敗した弁護士という印象を受けるとは思うが、主人公のミック・ハラーは彼なりの正義と信念に基づいて行動していて、時には良心の呵責に苛まれる部分を見せるなどしていてとても人間的で魅力あふれるキャラクターになっている。

 

そして基本的に今作はほとんどのシーンが裁判所の中だけで展開されていく。
人によっては映像の変化が小さいが故に合わない人も居るとは思うのだが、それを補って余りある話の奥深さがあるので安心して欲しい。
物語の進行ペースも程よいテンポで走り過ぎる事もなく、停滞することもなく上手く作られている。

 

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予測が出来てしまう法廷スリラーとしては捻りが多い訳でもなく、意外性が多い作品ではないかもしれないが、主人公を演じたマシュー・マコノヒーを始めとする俳優陣の魅力的な表現力によって、堅実にリアリティ重視の重厚な作品に仕上がっている。
しっかりと映画として面白く見応え充分な出来になっているので、観て損したとか観た時間が無駄だったと思うようなことはまずないだろう。

 

そしてほとんどのシーンが裁判所の中という法廷ドラマではあるのだが、一部の人にしか素早く理解出来ない小難しい法律話だけで展開されるわけでなく、上手いこと分かりやすくしつつテンポよく進み一気観しても気疲れすることもない。

 

勿論、本格的な法廷ドラマを期待してしまうと物足りないと感じてしまうとは思う。
しかし普段こういったカテゴリーの映画を「疲れそう」「難しそう」という理由で観る事がない人や、法廷ドラマをサラっと観たい人には物凄くオススメ出来る作品なのではないだろうか。



小ネタ

とある対決シーンを演じたマシュー・マコノヒーは「全てリハーサルなしで臨んだ」と語っている。
その理由は「その場その場でお互いの演技にキャラクターとして反応することが重要だと思った」からだという。
その結果、そのシーンの出来はとても満足のいくものに仕上がった。

 

 

 

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『パッセンジャーズ』感想・紹介・レビュー【サスペンス?ラブストーリー?】

パッセンジャーズ

パッセンジャーズ(字幕版)

 

2008年に公開されたアメリカ合衆国のサスペンススリラー映画。
監督をロドリゴ・ガルシア、脚本をロニー・クリステンセンが務めた。

出演
  • アン・ハサウェイ
  • パトリック・ウィルソン
  • デヴィッド・モース
  • アンドレ・ブラウアー
  • クレア・デュヴァル
  • ダイアン・ウィースト

 

序盤のあらすじ

セラピストをしているドクター、クレア・サマーズは、ある日飛行機事故で生存した5人を受け持つことになった。

グループカウンセリングの度に、窓の外にある人物の影が…そして、メンバーが一人ずつ消えていく…。

不審に思ったクレアは徐々に、航空会社が過失を組織ぐるみで隠すために、生存者を口封じのため狙っているものと疑い出し、解明のため奔走する。

その中、生存者の一人エリックは、唯一自宅での個人カウンセリングを希望。

事故のショックからか、躁状態とも言える彼の突拍子もない行動に、振り回されっぱなしのクレア。

引用:Wikipedia

 

今作は、セラピストも受け持っているドクターである主人公クレアの周囲で起きる、飛行機事故を発端とした様々な謎を血生臭さを感じさせないサスペンスとして描いた作品。
ただ正直、映画や小説などを観慣れている人や察しのいい人の場合は、そのほとんどの人が先の展開やオチが読めてしまうストーリーだったりもする。

 

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紹介の冒頭で「読めてしまう」と言ってしまうのも気が引けるのだが、今作は先の読みやすさ、設定から推察できるオチという観点から観ると全く擁護出来ないレベルなのも事実。
カテゴライズ的にはサスペンス系統にはなるのだとは思うが、サスペンスを期待して観るのはオススメしない。

 

勿論、映画などの作品を観慣れていない人だったり察しが悪い人は、分からないが故に楽しむことは出来るとも言えるだろう。
それと純粋にアン・ハサウェイ目当てで観るのはアリ。
相変わらずチャーミングでありつつ美しく、吸い込まれるような見た目をしているのもあってファンにとってはたまらないかも?

 

極端に言えば「オチ」さえ早い段階で気づかなければそれなりに楽しめる作品にはなっている。
問題なのは、ストーリー展開に複雑な伏線があるわけでもなくこれといった驚きがあるわけではないが故に、驚きどころがその「オチ」しかない点だろう。
前半部分はまだしも後半部分に差し掛かるにつれて、かなり無茶な設定や展開があるのでそれに対する違和感と共に気付いてしまう人が多くなってしまってのラストなので、「あぁ、やっぱりね」と感じてしまう人が続出してしまうのではないだろうか。

 

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冒頭でも触れたが、サスペンスとして観るというよりは人間の些細な心の動きや、周囲への感謝など共感する物語として観るとまた違った印象にはなると思う。
また違った観方としては、ラブストーリーとして観るというのも1つの手。
何故かと言うと、今作はヒロインとその恋人役の恋愛シーンが結構なウェイトを占めるから。
これを蛇足として考えてしまう人が居るのも勿論理解出来るが、ラブストーリーとして観ればこれはこれでアリかもしれない。


今作の総括としては、こんなブログを書いていてこういう事を言うのも可笑しいかもしれないが、「レビューを見る前に観ろ」と強く思う。
そしてサスペンスに見せかけたファンタジー要素の強いラブストーリーとして観る事をオススメする。

 

 

 

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『スリーデイズ』感想・紹介・レビュー【冤罪と妻】

スリーデイズ

スリーデイズ (字幕版)

 

2010年に公開されたアメリカ合衆国のアクション映画。
監督・脚本をポール・ハギスが務めた。

出演
  • ラッセル・クロウ
  • エリザベス・バンクス
  • ブライアン・デネヒー
  • レニー・ジェームズ
  • オリヴィア・ワイルド
  • タイ・シンプキンス

 

序盤のあらすじ

『ドン・キホーテ』などを講義する大学教授のジョンは愛する妻子とともに幸せな毎日を過ごしていたが、ある朝警察が自宅に突入して妻のララが殺人容疑で逮捕されてしまう。

3年が経ち、ジョンは一人で息子を育てながら、妻の無実を証明するため懸命に奔走していた。

しかし、裁判でララに不利な証拠が提出され、覆ることなく遂に殺人罪が確定してしまう。絶望し、獄中で自殺未遂を起こしたララをみてジョンは決断を下す。

「彼女の人生と家族の幸せを取り戻す」それは命を懸けた決断だった。

 引用:Wikipedia

 

今作は、2008年に公開されたヴァンサン・ランドン主演、フレッド・カヴァイエ監督のフランス映画『すべて彼女のために』のリメイク作品で、殺人の容疑で逮捕されてしまった妻ララの無実を証明するために、たった1人で息子を育てながらも懸命に奔走する様を描いた作品。

 

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この作品の最大の魅力はストーリーの内容でも、俳優陣の演技力でもない。
それは映画前半部分のゆっくりと進む展開と、後半には一変して一気に急加速するジェットコースターのようなテンポの差だろう。
勿論、それだけが魅力というわけではなく内容や俳優陣の演技力も良いのだが、とにかくテンポの差が快感になる。

 

そして前半がゆっくり進むと言ってもダラダラと進行しているなどということはなく、心地よいまったり感。
そして視聴者がそのペースに慣れたくらいのタイミングで一気に加速していく。
俳優陣の演技もそれらに合わせられて居るのか、ストーリーだけでなく演出や俳優陣の表情などから受ける印象も前後半でガッツリ変わる。

 

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主人公を演じたラッセル・クロウの演技やキャラクター設定も素晴らしく、至って普通の大学の先生がどうにかして妻の無実を晴らそうとするその様を見事に表現しきっている。
騙され、慣れない状況を呑み込めずオロオロしていたはずの主人公が妻の為にドンドン変わっていくのを観ているとある意味では成長物語のようにも感じる。

 

相手が警察だったりと少しニュアンスは異なるかもしれないが、成長物語でもあり勧善懲悪でもあり、孤軍奮闘モノでもある。
こういったカテゴリーが好きな人にはピッタリなのではないだろうか。
個人的にはハリソン・フォード、トミー・リー・ジョーンズ出演の『逃亡者』が好きな人にオススメしたい。

 

 

 

『逃亡者』の記事はこちら

westernpainting.hatenablog.jp

 




映画である以上、都合のいい部分も存在するしあり得ないと思ってしまう部分もある。
しかしそれらをどれだけ演技や演出で納得させるかがキャストを始めとする制作側の力量だろう。
この作品はストーリー構成的には特にこれと言ったものはないかもしれないが、ラッセル・クロウの迫真の演技によって作品として成立している。

 

そしてこれは観てからのお楽しみな要素だと思うので、詳細は避けるがとある俳優がちょこっとだけ出演している。
その人が出演しているシーンは今作のその後の方向性を決定づけると言っても過言ではない重要なシーン。
本当にちょこっとなのだが、その人が醸し出す雰囲気や重みによってシーンに説得力が出ていて素晴らしかった。


普段、こういう作品の場合は主人公なり味方側の誰かしらがやたらと屈強だったり、頭脳明晰だったりする事が多いのだが、今作は至って普通。
そんな普通にしか見えない主人公である夫が、ただただ妻を助けたいという気持ちだけで動いている様子は、非日常を描く映画のワクワク感とは程遠いかもしれない。
しかし一歩間違えば自分にも降りかかるかもしれない、と考えることもできて感情移入がしやすく観やすい作品だった。

 

 

 

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『星の王子 ニューヨークへ行く』感想・紹介・レビュー【コメディの傑作】

星の王子 ニューヨークへ行く

星の王子ニューヨークへ行く (字幕版)

 

1988年に公開されたアメリカ合衆国のコメディ映画。
監督をジョン・ランディス、脚本をデビッド・シェフィールド、バリー・W・ブラウスティンが務めた。

出演
  • エディ・マーフィ
  • アーセニオ・ホール
  • ジェームズ・アール・ジョーンズ
  • マッジ・シンクレア
  • シャリ・ヘッドリー
  • エリク・ラサール

 

序盤のあらすじ

豊かな自然と豊富な資源に囲まれたアフリカの王国ザムンダ。

21歳の誕生日を迎えたアキーム王子は、過保護な両親により、未だに何一つ自分で決断させてもらえず、父親のジョフィ・ジャファ国王によって勝手に自分の花嫁を決められてしまう。

それに不満を持つ王子は、「自分の伴侶は自分で見つけたい」と花嫁探しの旅に出ることを申し出る。

国王はアキームの申し出を「結婚する前に女遊びがしたい」と言っていると解釈し、快く快諾する。

アキームは世話係のセミを連れニューヨークにやって来る。

クイーンズ区の安アパートの一室を借りたアキームは早速花嫁探しを始めるが、中々理想の女性を見つけられない。

引用:Wikipedia

 

今作は、監督のジョン・ランディスがイギリス・ブライトンのロイヤル・パビリオンと画家であるアンリ・ルソーの絵画から着想を得て作られたヨーロッパ調の豪華絢爛な宮殿で、マサイビーズをまとった女性たちが華麗に踊るという一見奇妙な組み合わせにも見える架空の王国「ザムンダ王国」の王子アキームを中心として巻き起こる騒動を描いたコメディ作品。

 

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1988年公開作と30年以上前の作品ではあるが、主人公アキームが従者と共に身分を隠してアメリカで生活する中で、その身分を隠したことによって巻き起こってしまうあれこれがとても軽妙で面白可笑しく描かれているので、現代でも何ら問題なく楽しむことが出来る。

 

やはり流石ジョン・ランディスといった所だろうか。
『ブルース・ブラザース』(1980)『大逆転』(1983)などで感じさせてくれた、軽快で小気味いいコメディを今作でも存分に感じさせてくれる。
それに加え、主人公を演じるのがエディ・マーフィなのだからそりゃあもう面白くないわけがない。

 

エディ・マーフィの十八番とも言っても過言ではない軽妙で何処か人をおちょくっているようなマシンガントークも観ることが出来、王子の自立という側面もしっかりと魅せてくれる。

 

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そしてそれだけでなく、多民族国家に生きている人々に正しい形の希望を伝えてくれる。
例外も勿論あるにはあるが、基本的には本人の努力なしに成功はあり得ない。
成功したからと言って、その途端に傲慢になってしまえばその先は火を見るよりも明らかだろう。
様々な場面で自分の人生を左右するのは自分の選択次第、ということを視聴者に伝えつつも変にメッセージ性が強くなりすぎる事もなく、あくまでも「コメディ映画」として成立させている。

 

作品が大分昔の作品ということもあって、子供の頃見たことあるという人も多いと思う。
そういう人にこそもう1度観てもらいたいと思える作品だ。
観直した人のほとんどが、子供の頃は見つけることの出来なかった事を発見できるだろう。
そして、2021/3/5にはキャストをそのままに新作がAmazonプライムビデオで公開された。
好きな作品の続編というのは色々な意味で不安ではあるが、そちらも楽しみだ。



小ネタ

今作の撮影は断続的な猛吹雪の中4か月に渡りニューヨークで行われた。
架空の王国である「ザムンダ」は常夏という設定ではあったが、予期しなかった天候が良いコントラストになったとランディスは語った。

 

 

 

 

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『バトルフロント』感想・紹介・レビュー【スッキリ勧善懲悪アクション】

バトルフロント

バトルフロント(字幕版)

 

2013年に公開されたアメリカ合衆国のアクションスリラー映画。
監督をゲイリー・フレダー、脚本をシルヴェスター・スタローンが務めた。

出演
  • ジェイソン・ステイサム
  • ジェームズ・フランコ
  • ウィノナ・ライダー
  • ケイト・ボスワース
  • ラシェル・ルフェーブル
  • フランク・グリロ

 

序盤のあらすじ

元麻薬潜入捜査官のフィルは、とある事件をきっかけに現役を引退し、現在は亡き妻の故郷で愛する一人娘マティと二人で幸せに暮らしていた。

ところがある日、マディが学校でいじめっ子と喧嘩をしてしまい、そのいじめっ子の伯父であるゲイターと名乗る素行の悪い男に、フィル親子は目をつけられてしまう。

ゲイターは町を裏で牛耳ろうと企む麻薬売人であり、偶然フィルが元麻薬捜査官であると知ったゲイターは、とある目的を果たすために彼を陥れていく。

一方フィルは、愛する娘に危険が迫っていると感じ、ゲイターとの決着をつけることを決意する。

引用:Wikipedia

 

今作は、チャック・ローガンの犯罪小説『Homefront』を原作とし、1人娘の為にかつての危険な仕事を忘れて亡き妻の故郷である田舎で再出発した親子に降りかかる危機を描いた作品。

 

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言ってしまえば都合のいい勧善懲悪のど真ん中な超絶シンプルなストーリーに、スタローンさ満載の台詞回しタップリの映画。
これだけ振り切っていれば都合のいい展開や、浅いストーリーなんて気にするだけ野暮だろう。
スタローンが作る熱く男らしさプンプンのストーリーを、ステイサムが演じる事によってスタイリッシュでオシャレな雰囲気も感じさせてくれる。

 

良くも悪くも”期待通り””予想通り”の作品。
色々と考えてしまう部分もあるとは思うのだが、期待した通りに展開してラストまでかっ飛ばしていく設定の映画も必要だろう。
気軽に観れて、観た後も疲れることがなく頭の中がスッキリとする作品は、様々な媒体でストリーミング出来る現代においては必要不可欠であり丁度いいとも言えるのではないだろうか。

 

ジェイソン・ステイサムも実際はもっとシリアスで重厚な演技も出来るので、こういった作品が多いのは残念でもあるが、観たら観たで何だかんだある程度は楽しめてしまうから困りもの。
今作は『アドレナリン』『ワイルドカード』のようなジェイソン・ステイサムが好きな人にとってはピッタリ。
『トランスポーター』『メカニック』的な大胆かつスマートなジェイソン・ステイサムを期待していると、ちょっと物足りないかもしれない。

 

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しかし、それはまた違った味があるということでもある。
今回は娘が居るという、実はジェイソン・ステイサムが演じるキャラクターとしては珍しい設定だったりもする。
それが故にいつもとは違い、娘の存在が様々な場面で影響しながらも奮闘する彼の姿を観ることが出来る。

 

ただ、個人的には相手役が若干小物過ぎる(弱い)ような気もする。
出てくる敵の数が少ないし、1人1人の力量がどう足掻いてもステイサムと釣り合わない感じにはなってしまっている。
それが故にカタルシスは弱い。
日常を映すシーンは良かったのだが、この辺りの設定をもうちょっと練っても良かったような?


色々ひっくるめて「ジェイソン・ステイサムの映画」と言えば大体伝わってしまうのが彼の凄い所かもしれない。
単純な戦闘シーンも華やかに魅せてしまう彼だからこそ成立する作品かもしれない。

 

 

 

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